930: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/12/14(月) 00:40:03.28 ID:jGgpJsLto
盗賊団か…もしそれが本当なら、街の人達が強盗や盗みに巻き込まれちゃうかも知れない…
防衛隊の半分が出払ってる今は、親衛隊がその穴を埋める必要がある、ってこの間の話は私にも分かっていた。
「そっか。街の人達が心配だね…」
私が言うと、鳥の剣士さんも表情を引き締めて
「そうなんだ。俺達の街を荒らそうってんなら、容赦しないよ」
なんて言う。あの頃は、隊長さん達に「まだ若い」なんて言われていた鳥の剣士さんだけど、班長の任に就いてからはすごく立派に見える。
「頼もしいね」
私がそう言ってあげたら、鳥の剣士さんは嬉しそうな笑顔を見せて、
「ありがと。じゃぁ、行ってくる」
と止めていた足を踏み出した。
「気をつけてね!」
廊下を足早に歩いて行くその背中に声をかけると、鳥の剣士さんは律儀に私を振り返って
「あぁ!大丈夫!」
と応えて、階下へ続く階段を駆け下りて行った。
その姿を見送った私は、改めてワゴンを押して姫ちゃんのところへと廊下を進む。
廊下の窓から外を見やると、親衛隊の人達が隊列を作り、鳥の剣士さんの指示を聞いている。
みんな、お姉さんの理想に共感して街や私達を守りたいって言ってくれた人達だ。
魔法の力がなくなった今、これほど頼もしい存在はいない。だけど同時に心配でもある。
何かがあったときに、真っ先に危険になるのが防衛隊や親衛隊のみんなだ。
どうか、怪我をしないでね…死んだりなんかもしちゃ、ダメだから、ね…
私は窓から親衛隊の隊列を見下ろしながら、そんなことを胸の中で思っていた。
それから気を取り直して廊下を進み、お姉さんの私室へと到着する。いつも通りに静かにノックをして、ゆっくりとドアを開けた。
開いたドアの隙間からそっと首を突っ込んで中を覗くと
「あれ、幼女ちゃん?」
と零号ちゃんが私に気が付いた。
「離乳食、持ってきたよ」
私はそう答えながら、ギィっとドアを大きく開けてワゴンを部屋に引き込んだ。
姫ちゃんは、勇者様と一緒になって…なんだか不思議な踊りを踊っている。
「な、なに、あれ?」
私が思わずそう口にしたら、勇者様が私に気が付いたようで
「あ、まんま持って来てくれたの?ありがと」
と声を掛けてくれる。私は勇者様に
「ね、勇者様。それ、なに?」
と聞いてしまう。すると勇者様は
「あれ、幼女ちゃんも知らない?あたしのいた頃にはけっこうやってたんだけどな。体の成長を促す体操」
なんて言いって、聞き慣れない歌を歌いながらクネクネと奇妙に体を動かす。姫ちゃんも可笑しそうに笑いながら一生懸命それを真似しようとしていた。
踊り自体は奇妙だけど…た、楽しそうだからまぁ、いいか。
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