934: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/12/14(月) 00:42:14.46 ID:jGgpJsLto
でも、そんな私の心配もつかの間、コンコン、と部屋をノックする音が聞こえて、さっき廊下で別れた親衛隊員さんが部屋に姿を現した。
お姉さんの姿を確認するや、隊員さんは姫ちゃんに気を使ってか、控えめな声色でお姉さんに報告した。
「二の壁外で火の手の報です。焼けているのは、荷馬車宿の飼い葉倉庫とのこと。大尉様がすでに現場に急行されました。魔導士様が指示をお待ちです」
火の手…?
それって、つまり…
「か、火事…?」
零号ちゃんがそう言って息を飲んだ。
私も、喉が詰まるような感覚がして、ゴクリと唾を飲み込んでしまう。
「飼い葉倉庫はまずいな…延焼が速いぞ」
「議長様、あの辺りは木造の建物が密集しています」
「分かってる」
隊員さんの言葉にそう答えたお姉さんは、一瞬、私達に視線を投げてから宙をにらみ、そして二人の隊員さんに言った。
「本部内の親衛隊に非常招集を掛けろ。第一から第三分隊はここに残って警護だ。門戸は閉じて、外部からの出入りを警戒させろ。
第四から第九分隊には魔道士を指揮に長槍を準備して現場に向かうようにさせてくれ!第十分隊には、各所の防衛小隊へ伝令。
持ち場から半数を割って二の壁東門に集合し、あたしの指揮に従うよう伝え!」
「はっ!」
二人の隊員さんは、そういうが早いか部屋から駆け出て行った。
それを見送るや、お姉さんは無造作に着ていた儀礼用のマントを脱ぎ、さらには服まで脱いで、下着姿になった。
「零号、あたしの軽鎧を出してくれ」
お姉さんは、衣装入れから綿の鎧下を引っ張り出して着こみながら、零号ちゃんにそう頼む。
「う、うん!」
零号ちゃんはそんなお姉さんの声にハッとして、衣装入れの隣にあるお姉さんの装具入れから軽鎧を出し始めた。
「幼女、パン一切れ取ってくれ!」
「え、あ!うん!」
私は、お姉さんに言われて少し焦ってしまったけれど、気持ちを落ち着けてワゴンに載っていたカゴからパンと、
それから流し込みやすいようにと冷茶を陶器のポットのままひっつかんでお姉さんの下に走る。
お姉さんは椅子に腰かけ、零号ちゃんに手を借りながら軽鎧を慣れた手つきで身に着けていく。
そんなお姉さんの口に、私はパンを差し出してあげる。
お姉さんは、姫ちゃんがしているみたいにパンに噛り付くと口いっぱいにほおばって、ポットのお茶を欲しがった。
私がポットを差し出せば、お姉さんはその注ぎ口に直に口を付けて、ゴクゴクと飲み下してさらにパンを要求する。
それを何度か繰り返しているうちに、軽鎧は着込み終えた。
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