961: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/12/14(月) 21:10:39.75 ID:jGgpJsLto
私はそう思って、零号ちゃんから次に出てくる言葉を待つ。
そしてそれを聞いて、ギュッと胸を締め付けられてしまった。
「私も…同じだったんだ…私は、殺しちゃったんだ…十六お姉ちゃんのお姉ちゃんだった、十五号さんを…
なんにも知らずに、ただ寂しいのが怖くて、そう在りたくないって思って…私…私…」
そう、そうだった…零号ちゃんは、勇者候補だった十六号さん上の一番の使い手を、勇者の紋章の力使って殺してしまったんだ…
お城に住むようになって、最初の頃は気にしていたけれど、十六号さん達に精一杯甘える零号ちゃんのことを見て、
そんなことすっかり頭の隅の方に追いやってしまっていた。
零号ちゃんの告解は、それでも続く。
「それなのに…それなのにね…私、そのことをまだちゃんと謝ってないんだよ。
もうずっとずっと前のことだったけど、謝る機会も分からなくって、そのうちにみんなが優しくしてくれるから、私…そのことを話したら、
みんなが私を怒ったりするんじゃないかって思って…そしたら、また一人になっちゃうってそう思って…怖くって、怖くって言い出せなかった。
でも、私は謝らなきゃいけんないだと思う。
そうじゃないと、もしかしてそれをウヤムヤにしていたらそのことがいつかどこかで爆発して、私は何もかもを失っちゃうかも知れないでしょ…?
でもね、私、謝るのも怖いんだ。自分でもズルいって思う。だけど、私は取り返しの付かないことをしちゃったんだ…
私がしちゃったのは…もしかしたら、お姉ちゃん達にとっては勇者様がしたことよりも許せないことだったんじゃないか、って思う。
…ここ住んで、みんながお互いを大事にしているのを感じて…どれだけ大切に思ってるかを知ってるから…
そんな大切な人を殺したやつの謝罪の言葉なんか聞いてくれないんじゃないか、って思えちゃって…
だから、だからね…私、怖くて…謝らなかったらいつか一人になっちゃうかも知れないって思うのに、
謝ったときにそんな大切な人を殺したんだってことを許してはくれないんじゃないかって思えちゃって、
許してくれなかったらどうしようって考えたら…そしたら私そっちも怖くって…
どっちを選んぼうとしても、やっぱり、怖くて…怖くって、さぁ…」
零号ちゃん最後には、体中を震わせなが私にしがみついてきた。
私は、自分の胸の痛みを和らげるように、零号ちゃんの髪をそっと撫で、震える体をギュッと抱きしめた。
零号ちゃん、そんな事を考えていたんだね…それがこないだのお姉さんと勇者様との話を聞いて、限界まで膨れ上がっちゃったんだ…
「ずっとずっと、それを胸に抱えてたんだね、たった一人で」
私が言ったら、零号ちゃんは私の腕の中でにコクコクと何度も頷く。
私はそんな零号ちゃんの体を更にきつく抱きしめて、溢れ出た涙に滲まないように零号ちゃんに伝えた。
「辛かったね…気が付いてあげられなくって、ごめんね…」
零号ちゃんは今度は、私の肩に顔を埋めてフルフルと首を横にふる。私は、そんな零号ちゃんに言ってあげた。
「…大丈夫だよ、零号ちゃん。何があっても、私は零号ちゃんの味方でいるからね…
だから、一緒に…側にいてあげるから、今の気持ち、お姉さん達にちゃんと伝えよう?
きっと大丈夫…みんな、零号ちゃんが大切だもん。必ず分かってくれるよ」
返事はない。でも、零号ちゃんの腕が、私体を強く強く抱きしめて来た。
私も、零号ちゃんに安心して欲しくて目一杯その体抱きしめ返す。
それからしばらく私は零号ちゃんと一緒に、辛い気持ちが涙で流れて出切ってしまうまで、ずっとずっと屋上で抱き合って泣き続けていた。
そろそろ到着するはずの特別なお客さん、竜娘ちゃんとそのお母さんのことをすっかり忘れていて、
ちょっと申し訳ないことになっちゃったんだけれど。
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