963: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/12/14(月) 21:19:50.69 ID:jGgpJsLto
私は、そもそも十五号さんのことは、みんなもう許してくれているって思っていたから、ほとんど心配はしていなかったんだけど、
でも、もしちゃんと言葉にして伝えていないんなら伝える方がずっと良いと思ったので、零号ちゃんが胸の内をちゃんと吐き出して、
それを魔道士さん達が受け止めてくれたことに安心していた。
でもそれからしばらくして零号ちゃんは、
「十五号さんにも、謝りたい」
なんて言い出し、魔道士さん達が何もそこまで、だなんて言っても収まらず、それなら一緒に行こうか、と私は声を掛けてあげた。
十五号さんのお墓のある、かつて魔導士さん達が住んでいた王都の南にある小さな町に辿り着いたのが三日前。
お墓の前で、何度も、何度も謝った零号ちゃんはやっぱり、最後には疲れ切って、
墓地をあとにする頃には、トロールさんに背負われて寝息をたてている有様だった。
でも、そんな零号ちゃんを呆れたりなんてしなかった。
だって、もしかしたら私も人のことは言えないかも知れないしね。
街道を揺れていた馬車は、やがて門をくぐって村の中に入った。
「おぉし、着いたぞ」
御者のおじさんがそう言ってくれる。
「ありがとう、おじさん。あのね、私達、明日にはこの村出たいんだけど、良かったら明日また砂漠の街まで乗せてくれない?
今晩の宿代は出すからさ」
「ははは、良く出来た嬢ちゃんだな。だが、要らん気遣いだ。
どのみち俺も一晩泊まって交易都市に戻るついでにいろいろ仕入れるつもりだったからな。明日の朝にでもまた声を掛けてくれや」
おじさんはそう言って私を笑い飛ばし、おもむろに馬車を止めた。
「ここが、大手通りだな」
「うん、ありがとう。じゃぁ、また明日よろしくお願いします」
私は御者さんにそう言って、妖精さんやトロールさんに声を掛け、寝ぼけ眼の零号ちゃん達と一緒に馬車を降りた。
村の様子は、これっぽっちも変わってない。
ここを追い出されて、もう二年以上になる。
本当に懐かしいな…
そんな感慨に浸りながら、私は一歩一歩、足を進める。
不意に、真っ赤な目を擦りながら、零号ちゃんが私の隣にピッタリとくっ着いて来た。
「何、零号ちゃん?」
私がそう聞くと、零号ちゃんは両手を胸の前でギュっと握り
「私が守ってあげるから、大丈夫だよ」
と言ってくれた。
私はそんな零号ちゃんの思いやりに
「ありがとう」
とお礼をする。
零号ちゃんの心配はもっともだろう。
寂れた農村だけど、村の真ん中を横切るこの道には人通りも多い。知っている顔もたくさんある。
そんな村人の多くが私へと視線を送っているからだ。
生け贄として捧げたはずの人間が、西大陸中央都市が関係者に付与しているマントを羽織っている。
それだけでも村の人達にとっては恐ろしいことだろう。仕返しに来たんじゃないか、なんて思っても当然だ。
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