過去ログ - 向井拓海「The Passion――判定は許さない」
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89:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 20:14:59.47 ID:hGctJzQM0
 何もかもが嫌になったアタシはひたすらバイクで走り続けたが―――、
あの時早苗の姉御にとっつかまって天狗の鼻を折られたおかげで踏みとどまれた。
でなきゃ今頃は無謀な喧嘩でとっくにくたばっていただろうさ。


以下略



90:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 20:15:52.28 ID:hGctJzQM0
「ううっ……。くるみけんかは嫌だよ〜」

 くるみの肩を両手で掴み、正面から見据える。
柔和な優しさではない。一刀万殺の激しい怒りをもってアタシはくるみを導くのだ。

以下略



91:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 20:17:17.28 ID:hGctJzQM0
 自分の心へ嘘を付かなきゃ生きられないのは辛い事だ。
そいつを納得しなきゃいけないのはもっと辛い。

 くるみは頭が回らないんじゃない。頭が切れすぎるんだ。
自分がどうこうではなく、何時だって他人の事を考えちまう。
以下略



92:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 20:17:49.81 ID:hGctJzQM0
 くるみの肩から手を離し、改めて柔らかく両手を握る。
この温かさはアタシの曇った眼でも確かに見える。



以下略



93:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 20:18:31.72 ID:hGctJzQM0


「全てがあいまいな日曜日。天気は晴れ。朝の10時。
 アタシは自分に嘘を吐いていた」

以下略



94:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 20:19:58.23 ID:hGctJzQM0
 だけどそれじゃあまりにも夢がねぇ。
だから考えたいのさ、子供騙しを言った親父の気持ちを。
親はどんな気持ちで子供へ嘘を教えるのかと。

「悪意をもってそれを言ったんだよ。
以下略



95:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 20:20:44.46 ID:hGctJzQM0
 パンか―――思い出したぜ。アタシは昔パン屋でバイトをしていたんだった。
気に入ってくれるよな、何せ食いもんの話だぜ。

「結末は知ってるよ。
 アンタの嘘なら、あたしは何時だって聞いてきた。だからさ今回も嘘を聞かせてよ」
以下略



96:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 20:21:22.43 ID:hGctJzQM0
 アタシはつまんじゃいねぇよ。まかないでパンが出てくるしな。
パン、パン、パン何時だってパンだ。泊まり込みで働いていたからよ一日中パンにまみれた生活だ。

 そんなこんなで夏休みの間中汗水たらしてパンをこねあげた給金でよ、無事に相棒のバイクを買ったのさ。
これがまあ聞くも涙語るも涙の物語でよ、あーどっちかっつーと笑い話になるかもな。
以下略



97:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 20:22:30.34 ID:hGctJzQM0
 チッ痛いとこついてきやがるぜ。ああそうだよ勝てるわきゃねぇだろ、大声で悲鳴を上げて後はもう逃げの一手だ。
でもよ火事場の馬鹿力っつーのかな、あん時のアタシは100メートルを12秒で走り抜けた自信がある。
オリンピックにも出れただろうが、困った事に犬ってのはもっと足が速いんだ。

 必死で原田んとこへ駈け込んだらよ、アイツが店のバイクをバリケードにして犬どもを追っ払ってくれたのさ。
以下略



98:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 20:23:08.50 ID:hGctJzQM0
 体は正直だ、決して持ち主を裏切らない。そいつが歩んできた仕事の香りが体へ染み着くんだ。
パン屋の娘はバターの、和菓子屋の娘は餡子の、そして車屋の娘はオイルの良い匂いが染み着いている。
例えばアタシがカーワックスで髪を洗ってツヤを出したとしても、原田の真似は出来やしない。嘘を吐くのは大変だ。

「全てがあいまいな日曜日。天気は晴れ。朝の10時」
以下略



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