87: ◆WnJdwN8j0.[saga]
2014/10/13(月) 17:01:48.78 ID:kCIBrDNz0
魔王は特別驚く様子もなく「ほう」と呟く。
暗黒騎士「あの紋章が何かは、おわかりですね」
魔王「勿論だ。だが暗黒騎士よ――何故わざわざ見せに来た?勇者を亡骸にして我の前に連れてくるのがお前の役目だろう。それともまさか、お前は本気で勇者に惚れたとでも?」
暗黒騎士「その事ですが――」
魔王の口調は相変わらず穏やかだったが、場の緊張感が増したのはわかった。
暗黒騎士も言葉を慎重に選んでいるのがわかる。
暗黒騎士「まずはお詫び申し上げます。私はあれが勇者であると知っていて妻として娶りました。しかし勇者といえど満足に戦えぬ小娘…私の妻となった経緯も、勇者としての使命から逃げた結果であります」
魔王「ほう、面白い話だな」
暗黒騎士「昨日もあれは人間側の者に、はっきりと勇者の放棄を宣言しました。この話はその内人間側に広がることでしょう」
魔王「フッ…人間共は絶望に包まれるだろうな」
魔王は初めて笑った。暗黒騎士の話を聞いて、さも嬉しそうに。
魔王「暗黒騎士よ。勝手なことをした罪は重いが、勇者を懐柔し人間共に絶望を与えたことは褒めてやる」
暗黒騎士「えぇ、それで――」
魔王「言いたいことはわかる。勇者をこのまま生かしておいてくれないか、だろう」
暗黒騎士「あれが人間側に再びつくことはありえません。多少、監視をつけても構いません。ですから命は――」
魔王「暗黒騎士、お前は…いや人間は、勇者の紋章について少々勘違いをしている」
魔王は暗黒騎士の言葉を遮り、話を始めた。
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