65: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 22:38:12.02 ID:p7APovfi0
年季の入った巨大な木造建築は、確かに神様のおはす所に相応しい荘厳さと神聖さを持ち合わせていました。水の湧き出てるブロックがあって、確かあそこで手を洗うんだっけ。どんな作法なんだろう。飛鳥さんがいないのが、少し残念でした。
……心配の必要はありませんでした。目の前のブロックに手順が全部書いてあったんです。
66: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 22:43:31.27 ID:p7APovfi0
「こずえさんは、小銭を持ってきてますか?」
私はお賽銭箱に五円玉を投入しました。縁が作れるから……なんだかどうしようもない駄洒落ですけど、そんなルールを守ってみたい気分でした。夏祭りらしきテンプレートに従って遊んでみたのは、無駄じゃなかったみたいです。
67: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 22:45:56.82 ID:p7APovfi0
あとはマニュアルに従って、二礼二拍一礼をするだけでした。目の前に垂れ下がってる太い縄を引っ張ると、先についた鈴が頭に直接流れるようにガラガラと響きました。私がそれに昏倒しそうになってる中、こずえさんは涼しい顔で、まだお賽銭を入れてました。
二回礼をして、二回柏手を打って、そこでお祈りをしました。以前なら「非科学的」の一言で断じて省略したと思うけど、今ならお祈りとお祭りの意味が少し解る気がします。
68: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 22:50:47.35 ID:p7APovfi0
この日までに、何かをする。それが出来たことを憂なく祝う。これを何度も繰り返すことが辛い夏を、ひいては生活を豊かに捉えなおさせるんです。そんな約束を守る生活の積み重ねが、自分を成長させるんだと……信じられるようになりました。
音楽で生活をする。この夢は自分で叶えたいから、お祈りしません。とするなら、もっと俗っぽいと言うか、一般的なのがいいはずです。
69: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 22:56:53.74 ID:p7APovfi0
沢山失敗をして、でも、それを何とかしようと沢山頑張って。望むカタチじゃ無いけど……評価はされたんだって。いつ会えるかわからないけど、絶対に話したくなりました。もし会えないなら、いっそ職場に押し掛けてみようかな。いや、やめよう。それは迷惑をかけすぎちゃう。
自分のしたいこと、やりたいこと、やれること。これらが私の中で、どんどん膨らんでいくのを感じ取れていました。
70: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 22:59:14.95 ID:p7APovfi0
:/
「ふわあぁぁぁぁぁ」
71: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 23:00:37.03 ID:p7APovfi0
「こずえさんは、何をお祈りしたんですか?」
「……おいのりってなぁにぃ?」
72: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 23:04:06.89 ID:p7APovfi0
「……いいのぉー……?」
「いいんです」
73: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 23:05:43.95 ID:p7APovfi0
「当たり前ですっ。……ふふっ、あは、あっは、あはははっ」
金魚の頭が丸ごと無くなってしまった。それがショックで無いと言えば嘘になります。けれど、それより強く、愉快だと思いました。
74: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 23:08:45.12 ID:p7APovfi0
「あはっ、あは、けほっ、おぉ……だ、大丈夫です。それと、ありすでいいですよ」
お礼と言うわけではありません。だけど、こずえさんには名前で貰ってもいいやって、思えるようになりました。
75: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 23:10:43.99 ID:p7APovfi0
「おねむ……なのぉー……?」
「ええ、まぁ。……すみませんが、保護者の方が来たら教えてください」
76: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 23:12:12.66 ID:p7APovfi0
意識が少しずつ沈みこみました。祭の掛け声や足音が伸びて行って、いつしか聞き取れなくなり、ついに風景が暗転しまいした。
77: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 23:14:08.51 ID:p7APovfi0
:/
「ありすちゃんっ。起きて、起きてーっ」
78: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 23:15:36.14 ID:p7APovfi0
花火には、すっかり遅い時間です。タイマー機能は使い切った所で止められてました。こずえさん、でしょうか。
それを読み終えたのと同じタイミングで、空の方から火薬が爆ぜる音が聞こえました。室内からは、窓が遠くて見えません。
79: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 23:16:57.14 ID:p7APovfi0
花火には、すっかり遅い時間です。タイマー機能は使い切った所で止められてました。こずえさん、でしょうか。
80: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 23:19:09.32 ID:p7APovfi0
「回収されたって、センターの人が言っていたよ?さ、肩を貸りて」
何で光さんが、知っているんだろう。私の脇に飛鳥さんの肩が差し込まれて、ゆっくりと身が起こさせました。エクステがまた鼻をくすぐります。
81: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 23:21:59.22 ID:p7APovfi0
センターの人は、笑って応対をしてくれました。どうやら私は、迷子案内に助けられてしまったみたいです。……ばつが悪い。
82: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 23:23:04.08 ID:p7APovfi0
「こずえさんと、また来たいな」
何と無く、口からまた前に出ました。
83: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 23:24:22.33 ID:p7APovfi0
「勿体ぶらないで教えてください。泣き真似だって、やめてくださいよ」
「CuPさんの秘蔵っ子なんだって。ところで、秘蔵っ子ってなんて書くのかな?」
84: ◆RevGiOKgRo[saga]
2014/10/24(金) 23:28:09.43 ID:p7APovfi0
今年の夏祭りに参加出来なかったのが、悔しかったので書きました。また、私にとってはじめて書いた地の文でしたが、見苦しいところは無いでしょうか……。
この時期にはまだヨモツヘグリロックシードはまだ販売されていないとか矛盾がございましたが、どうかご容赦下さい。
85:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage]
2014/10/25(土) 09:21:41.64 ID:UcpdYhlm0
乙。
夏祭りの熱に浮かされたような叙情と、内省的なありすのモノローグがとてもよろしい
>>……これ、食べてもいいのかな。光さんにでは無く、金魚に対して申し訳なく思ってしまいました。そんなセンチメンタルを作る一点で、この芸術は致命的な欠陥品だと思います。
この一文がとても好きだ
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