過去ログ - ロールシャッハ「シンデレラガール?」
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49: ◆v.By3fESrTsY[saga]
2014/11/04(火) 00:43:56.02 ID:z+djFstk0
エタノールの臭いに目を覚ます。
視界には淡い緑色の天井が広がっていた。

ロールシャッハ「…ここは」

ちひろ「目覚めましたか」

その声に目をやるとセンカワがこちらを見つめている。
そして、脳細胞が急激に活動を再開した。
ベッドから飛び降り、点滴を剥ぎ取りながらセンカワに問う。

ロールシャッハ「…ヤツは! 俺の顔は! 俺はどれだけ眠っていた!?」

ちひろ「…今日はライブ当日です。例の男はアナタの顔と共に行方不明」

…それだけの情報が聞けたなら十分だ。
ベッドの脇に置かれていた服を抱える。
顔を取り戻さなくては、俺がロールシャッハであり続けるために、戦い続けるために。

ロールシャッハ「…」

視線を感じて目をやるとセンカワがこちらを見つめている。
その目には、気味の悪い感情が浮かんでいた。腹に巻かれた包帯を見つめ、センカワはようやく口を開く。

ちひろ「死にますよ、その傷。」

ロールシャッハ「大丈夫だ、もう癒えている」

ため息を吐き、目を伏せるセンカワを無視し、病院の窓に片足を乗せる。
跳ぼうとしたその時、センカワがまた質問を投げかけてくる。

ちひろ「…アナタはアイドル、あの子たちをどう思いますか?」

ロールシャッハ「哀れなコマーシャル。流されるだけのバルーンだ」

そうだ、あの子供たちはいずれ知る。世界を、何の意味もない人生を。
だが、センカワの一言が俺の思考を途切れさせた。


ちひろ「違います」


言うや否や、センカワは俺の胸ぐらをつまみ上げた。
大きな瞳が俺を見つめている。

ちひろ「アナタがこの世界にインクを垂らすように、彼女たちも色とりどりのインクで染め上げようとしている。それはこの数週間で分かったでしょう?」

ロールシャッハ「何が言いたい」

脳裏にマキハラの、コシミズの、キバの言葉が浮かぶ。だが、そんなものは俺には関係ない。俺は俺の…

ちひろ「アナタはきっと変わらない。どこまでもロールシャッハであり続ける」

ロールシャッハ「…」

ちひろ「それでいいんです、ロールシャッハ。アナタはアナタのやり方でこの世界に意味を刻み付けて」

ロールシャッハ「お前は…」

ちひろ「だけど、この無意味な世界に意味を付ける役目はアナタだけじゃない。…思い上がるな、ロールシャッハ」

センカワの言葉に怒気がこもる。
センカワの目に、表情一つ変えない男が映っている。だが、センカワはその男を見ていない。
この女が見ているのは…。

そして、センカワは俺を放した。

ちひろ「私は可能性、あの日壊れなかった腕時計、落とされなかった精密部品。どうか、ご武運を、ミスター」

ロールシャッハ「…」

センカワは頭を下げ、とっとと病室を去って行った。…淫魔め。
窓から飛び出すと、縛り上げたカーテンを使い地面に下りる。
予備の顔はどこにもない、ヤツから取り返さねば。

…ヤツのいる場所は分かっている。
騒々しく、くだらなく、淫蕩で、間抜けな、夢の吹き溜まりだ。
そこはきっと、七色に染め上げられていることだろう…。


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