過去ログ - 勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」
1- 20
132:名無しNIPPER[saga]
2015/01/12(月) 20:56:39.24 ID:pkf2ayLi0
エルフ少女「とはいえ、いくら私でも誰彼かまわず助けたりはしない。今回は特別だったんだよ、勇者」

勇者「そ、そうなのか? じゃあ、どうして俺を?」

エルフ少女「君が私たちエルフの『恩人』だからさ」

勇者「……いや、意味が分からない。エルフがいることすら今初めて知ったのに、エルフに対して何かしたことなんてないぞ? 俺」

エルフ少女「いいや、大いにあるよ、勇者……君は、あの虎の化け物をこの森から追い払ってくれた」

勇者「……ッ!!」

エルフ少女「あいつはエルフの集落を探しに来ていた。危ない所だったんだよ。私たちの村を隠している結界は、あんな桁外れの化け物の目までは誤魔化せない」

勇者(獣王の事か……? でも、あいつは俺を殺すために来たんじゃ……?)

勇者(いや、ひょっとして俺を殺すことの方が、ついでのことだった…?)

勇者(成果の上がらぬ探索に苛立ちを覚えていたから、あれ程強者との戦闘を楽しみにしていた……?)

勇者(確かにそう考えればあの時の奴の態度にも納得出来るが……いや、でも、それはつまり……)

勇者(獣王はただ漫然とあの場所で俺を待ち伏せていたのではなく―――俺が祠を訪れる日を正確に知っていたってことになる)

勇者(その情報が、奴に伝わっていたっていうことは―――)

エルフ少女「いよいよとなれば」

 勇者の思考は、エルフ少女が言葉をつづけた所で中断された。

エルフ少女「いよいよとなれば、私が奴と戦うつもりだった。こう見えても村一番の術士だからね。だから、奴の動きを追っていたんだけれど、いつの間にか奴は森から姿を消していた」

エルフ少女「そうしたら、奴の匂いが残っていた場所に、君がボロボロになって倒れていた。すぐに判ったよ。君が奴と戦い、追い払ってくれたんだとね」

勇者「……やめてくれよ。買いかぶりだ。俺はただ…」

勇者(負けて、命乞いをしただけだ。処理するのもおぞましい汚物を演じただけだ)

エルフ少女「何を言うんだ。私は治療の時に君の体を見た。あの虎に切り裂かれた傷の他にも大小様々な傷跡が君の体にはあった。特に、『今回の傷と交わるようにあった大きな傷跡』には舌を巻いたよ。君の体は間違いなく歴戦の戦士のそれだ」

勇者「本当に……買いかぶりが過ぎるよ、エルフ少女。俺の傷にかっこいいエピソードなんてひとつもない。馬鹿な親父が調子に乗った。たったそれだけの、クソくだらねえエピソードばっかりだ」

 自虐するようにそう言った後、勇者は大切なことを思い出した。

勇者「そうだ……エルフ少女、祠の前に倒れていたのは俺だけだったのか? 他に人はいなかったのか?」

エルフ少女「私がその場所に行ったときは君以外の人はいなかったよ?」

勇者(ということは、あの三人は自力で町に戻ったってことか……無事に帰り着いていてくれよ……)



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/896.78 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice