過去ログ - 勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」
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838:名無しNIPPER[saga]
2015/12/20(日) 18:00:05.34 ID:fUuHQ7Ru0
 時は三か月前に遡る。
 勇者一行は光の精霊についての情報を求め、『伝説の勇者』の足跡を辿り、そして遂に有力な情報に行き当っていた。

「世界の中心、言わば地球のへそとでも言うべき地に聳え立つ世界樹。世界全体をその根で支えていると伝えられるその聖なる樹に『光の精霊』は宿っているという」

 とある村に伝わっていたそんな伝承を頼りに、勇者は『世界樹の森』と呼ばれる聖地に足を踏み入れていた。

勇者「ぐあ〜、しんど……」

武道家「まったくだな。入口からここに至るまで、足の踏み場というものが全くない」

戦士「道を遮る枝葉を切り払うだけで一苦労だ。まさか精霊剣を使ってなお手こずる硬度とは」

僧侶「ヒィ…ヒィ…!」

勇者「僧侶ちゃん大丈夫? 休憩いれよか?」

僧侶「い、いえ……まだ頑張れます。頑張らせてください」

 エルフの住まう大森林、アマゾネスの住処である南国の密林など、様々な森を踏破してきた勇者達だったが、この世界樹の森にはほとほと参ってしまっていた。
 その大きな要因は二つある。
 まず、世界樹の森は本当に一切人の手が入っていない。
 つまり道というものが無い。勇者達は鬱蒼と生い茂る木々をいちいち切り開いて進まなければならない。
 そしてその木々や植物群の繁栄が異常だった。
 行く手を遮る木や草がいちいちデカい。精霊の加護で身体能力が格段に上がっているはずの勇者達ですらその処理には手こずった。
 いや、デカいのは植物だけではない。

巨大猪「………」ムオーン…

勇者「ぬあ!! またでやがった!!」

巨大猪「ンゴッ!! ンゴゴゴ!!!!」ドドドド!

勇者「おふん!!!!」ドッパーン!

武道家「ゆ、勇者ーーーッ!!!!」

戦士「おのれ、よくも勇者を!!」チャキッ

僧侶「か、回復しますぅ!!」

 世界樹の森に住まう生き物は、その悉くがスケール違いだった。
 人の手が入らず、太古の姿のまま現存する森。
 成程、この地に生きる精霊が特別な力を持つというのも頷ける。
 いや、或いは―――この地に居る精霊が特別だからこそ、このような森が誕生したのか。
 その判別をつける余裕は、今の勇者達には無かった。

巨大猪「」ズズーン…!

武道家「な、何とか退治できたか……」

勇者「今の戦いでかなり消耗したな……食糧も残りが心もとなくなってきたし、一度最寄りの町へ戻ろう」

 そう言って勇者は背負っていた鞄から『翼竜の羽』を取り出した。

勇者「よし、じゃあ皆俺に寄ってくれ」

 『翼竜の羽』の効果を複数の対象に伝播させるには、使用者と少しでも物理的な接触を持たなければならない。
 そのため、仲間たちはそれぞれ思い思いに勇者の体に手を伸ばすのだが……

勇者(……なんか最近、戦士の様子がおかしい……前は肩にぽん、と横から手を置く程度だったのに、最近はなんかわざわざ正面からすり寄ってくるというか……戦士が俯いてて顔見えないから意図が読めない! 怖い!)

 今回もまたやたらと近づいてきて鎖骨辺りに手を添えてくる戦士に戦々恐々としながら、勇者は『翼竜の羽』を発動させた。




 しかし、不思議な力でかき消されてしまった!!





勇者「……は?」

 これにて勇者一行の遭難が決定した。



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