過去ログ - 摩耶「あたしが手にする『自由』」提督「俺が与える『自由』」
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◆vkHTV4M25U
[sage saga]
2015/02/20(金) 01:46:34.96 ID:/jFv2HVR0
蒼龍の耳が楽しげな声で震えた。耳にかかった息が異様なまでに冷たかった。
あまりの事態に、蒼龍の理解が追いつかない。
蒼龍(は……?)
蒼龍(腕、え? 誰の?)
そんなもの、1つしかないに決まっている。だが、その可能性を考えることができない。それほど彼女は、静かにあっさりと理解できない方法で捕まっていた。
摩耶「チェシャ猫ッ! てめえ!」
摩耶の驚愕と怒りに満ちた叫びで、蒼龍はようやく事態を理解した。
チェシャ猫に捉えられたということを。
気付いた瞬間、凄まじい悪寒が背筋を走り抜けた。
チェシャ猫「チェシャネコ? ソレハボクノナマエカイ?」
摩耶「離れろ貴様ッ! じゃねえと、殺す!!」
チェシャ猫「ヤレヤレ。キミタチハ、ホントハナシヲキカナイネ。ソレニシテモ、ボクハニンゲンカラハソウヨバレテイルノカ……。フムフム」
摩耶「離れろっつってんだろが!!」
チェシャ猫「イヤダネ」
にべもなく、チェシャ猫は断った。
摩耶「殺すぞコラッ!!」
チェシャ猫「アハハ、ヤレバイインジャナイカナ? タダシ、オナカマモシンジャウケドネ」
摩耶が言葉を詰まらせる。悔しげな歯軋りが聞こえた。
己が人質に取られたことを悟り、蒼龍はさらに慄然とした。チェシャ猫の異様さが、凍えるような腕の感触とともに伝わってくる。こいつは今までの深海棲艦とは明らかに違う、と蒼龍は思った。
チェシャ猫「ジョウキョウガノミコメタカナ? ソレジャ——」
チェシャ猫はくるりと振り返った。その動きに合わせて蒼龍も後ろを向く。憤慨に打ち震える摩耶の顔が目に飛び込んできた。
チェシャ猫「ボクト、オハナシシヨウカ」
摩耶「話だと……? てめえふざけてんのか?」
チェシャ猫「マジメニヤッタコトナンテイチドモナイヨ。ツマラナイジャン」
チェシャ猫はゲタゲタと笑う。その不気味な笑いを耳元で聴いた蒼龍は、不快さのあまり無理矢理にでもチェシャ猫を引き剥がしたくなった。気持ち悪い昆虫に触れてしまった時の不快感に似ていた。だが、引き離せない。連想砲を搭載した巨大な尾がこちらに向いているからだ。動けば、殺される。
摩耶が歯軋りを強めた。蒼龍が人質に取られていなければ、すぐにでもチェシャ猫をミンチに変えようとするだろう。
チェシャ猫「スゴイサッキダ。コワイナア。シンパイシナクトモ、オハナシサエデキレバ、キミノトモダチハカイホウシテアゲルヨ」
摩耶「……」
チェシャ猫「ウタガワシゲダネ。ホントダヨ?」
摩耶「誰が、てめえみてえな化け物の言葉なんざ信用するか」
チェシャ猫「ボクガバケモノッテ……。マア、マチガイデハナイケドサ。キミニハイワレタクナイナア」
摩耶「……んだと?」
摩耶の顔が、更に張り詰めたものとなる。
チェシャ猫「ソノママノイミダヨ。キミノタタカイブリヲミテ、オモッタンダ」
チェシャ猫「マルデ、『ボクタチ』ノヨウダッテ」
チェシャ猫のその言葉に、その場の空気が凍りついた。
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