21: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/11/21(金) 22:43:00.94 ID:kVCj7/h70
「ちょっと、貴方大丈夫!?」
葛藤の最中、大声で現実に呼び戻される。
目の前にいたのは、
「救急車……えっと、何番だっけ……ああもう!」
容姿こそ似てはいなかったが、雰囲気が僕の愛する女にそっくりな女の子がいた。
それに加え、硬度の高そうなアホ毛がチャームポイントとなっていて、非常に似合っている。
ひょっとして。
そうなのか。
「あ、気が付いた?ちょっと待ってて、今救急車を――」
慌てふためく彼女の手に、制止するよう千切れそうな手を伸ばす。
救急車はいらない。
そんなものが来たらそれこそ大騒ぎになってしまう。
「あれ……?あ、貴方……」
彼女もようやく気付いたのだろう。
今の僕は、明らかに人が耐えられる損傷のレベルを超えている。
僕は中途半端ではあるが吸血鬼だ。
君の血を吸えば、この場も乗り切ることが出来る。
「…………っ!!」
あまりの急展開に、彼女も怯えている。当たり前だ。
早く逃げ出してくれ。
そしたら、諦めもつくんだ。
死にたくはないけれど、その為に誰かを犠牲にするなんて、もっと嫌なんだ。
と、彼女は何を考えているのか、電信柱にもたれかかる僕の前に座り込んだ。
「大丈夫よ、見捨てたりしないから」
性分なのよ、と彼女は震える声で精一杯笑ってみせる。
その笑顔も、あまりにもひたぎに似ていて。
「ねえ、せめて、最後に教えてよ。貴方、名前は?」
僕は思わず彼女を抱き締めた。
皆が逝って、化物として扱われ、人としての感情も捨てきれず、曖昧なままの僕だったけれど。
僕は一人ではなかった。
それだけでいい。
「……阿良々木暦」
それだけで、理由としては充分だ。
こよみヒストリー END
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