20: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/11/21(金) 22:41:29.13 ID:kVCj7/h70
017
年月は全てを風化させる。
物質はもちろん、概念的なものから形のないものまで、全てだ。
唯一変わらないとするのならば、今この時にも流れ続けている時間だけだろう。
あれから、どれだけの時が流れただろうか。
どれだけの年月を体験して来たのだろうか。
永劫にも近い年月を過ごして行く上で、精神は最適化を行う。
一日はやがて一時間に等しくなり、更には一分へ、一秒へと。
未だに人類が滅びていないところを見る限り、そんなに経っていないのかも知れないが。
忍はどうしただろうか。
人恋しいなんて感情はとっくに何処かへ置いてきてしまったが、気にはなる。
摩耗し切った身体を引きずって、街頭の下へと腰を下ろした。
怪異はいつの時代でも大衆に受け入れられるものではない。
異なる存在となった対価、とでも呼ぼうか。
人とは違う存在というだけで、人から攻撃される理由に十分なり得る。
僕が人間に対し傷付けたり襲ったりと、何かする訳じゃあないのだけれど――そんなことは人間からしたら関係ないのだ。
人間は弱いから、群れて異物を排除しようとする。
僕もかつては人間だったからよくわかる。
人間に襲われたからと言って、僕が人間を憎むことは出来ない。
僕は人間が大好きだ。
身体中を撃ち抜かれ、斬られ、人間ならばとっくに死んでいる程の攻撃を受けても、だ。
もはや血もほとんど流れ出て、四肢に至っては今にも千切れ落ちそうだ。
何も珍しい事じゃない。
今までにも何回でもあったし、仕方の無い事だ。
人間として産まれ、化物になった後も人間に助けられ、人間によって生かされ、人間の手で殺される。
それでもいい――そう思えないのならば、僕はまだ化物になり切れていないのだろう。
死にたくは、ない。
僕を生かしてくれた人々の為にも、寿命を全うするまでは死ぬ訳には行かない。
怪異である僕の寿命がどれ程なのかはわからないけれど。
それだけは、絶対に譲れない。
そんな綺麗事を言い訳にしてでも、死にたくはないのだ。
しかし、どうすればいい?
元は吸血鬼をベースとした僕の身体だ。
人間の血を摂取することが出来れば、生き長らえられるだろう。
人は喰わないという主義には反するが、でも、けれど。
死にたくない。
僕だっていつかキスショットを助けたんだ。
死にたくない。
だったら、ひとりくらい、
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