3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/25(火) 02:38:36.26 ID:a4v2ARuR0
漢字違い、とはいえ息子と同じ「ゆう」か。などと場違いな感傷にとらわれていた私をよそに、彼は仕事を始める。
「蛇口の水漏れという事でしたが」
「ええ、これなんですけれど」
少し蛇口を捻ったりしてみて、分かりましたと言った青年はキッチンシンクの下の荷物を出しても良いですか?と聞いてきた。
ここまで来たらもう、断る理由も無いのでどうぞ、と応えて置くと青年は調味料のボトルなどを全て取り出し、シンクの下の配管を弄っている。作業の邪魔になるのか、そでを腕まで捲っているのをじっと見てみる。顔立ちの割に、がっしりとした体つきではある。こういった商売柄、身体が資本という訳か。
「水はこれで止まりました。多分蛇口の中のパッキンが切れてるんでしょう。直ぐに交換できますよ」
「お願いします」
腰に下げていたスパナで手早く蛇口を分解すると、彼は私の前に小さな黒いゴムパッキンを差し出した。その顔は、何となく子供が母親に講演で拾ってきた、ちょっと変わった石や草木を見せる表情に近かったのが、妙に私の心を揺さぶった。
「大分古くなってましたね、ほら、新品こっちなんですけど、大分固いでしょう?」
「ええ」
「パッキンも古くなると、こうやって固くなってヒビが入っちゃうんですよ。新品に交換すればすぐに止りますよ。他の部分のパッキンも、固くなりはじめてますからサービスで替えておきますね」
「あ、ありがとうございます……」
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