過去ログ - ビッチ(改)
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32:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/29(土) 00:36:55.79 ID:sji++a7Lo

「そうかな」

「そうよ。いつもは喧嘩ばかりしてるのに。それに明日香、今日のあなたすごく可愛いよ。
いつもより全然いい」

「そう?」
 妹は少し顔を赤くした。「お兄ちゃんはどう思う?」

 突然僕は妹に話を振られた。とりあえず僕は口に入っていたトーストをコーヒーで流し
込みながら思った。妹が僕のことを好きなのかどうかはともかく、妹のこの変化は良いこ
とだ。

「うん、似合ってる。と言うか前の格好はおまえに全然似合ってなかった」

 言ってしまってから気がついたけどこれは明らかに失言だった。似合っているで止めて
おけばよかったのだ。何も前のこいつのファッションまで貶すことはなかった。僕は今度
こそ妹の怒りを覚悟した。

 妹は赤くなって俯いて「ありがとう、お兄ちゃん」と言っただけだった。

「本当に仲良しになったのね。あなたたち」

 母さんが僕たちを見て再び微笑んだ。



「おはようございます。奈緒人さん」

 奈緒はいつもの場所で僕を待っていてくれた。今日は彼女より早く来たつもりだったの
だけど結局奈緒に先を越されてしまった。

「おはよう、奈緒ちゃん。待った?」

「いえ。あたしが早く来すぎちゃっただけですよ。まだ約束の時間の前ですし」

 奈緒が笑った。やっぱり綺麗だな。僕は彼女の顔に見入ってしまった。

「どうしました?」

 不思議そうに僕の方を見上げる奈緒の表情を見ると胸が締め付けられるような感覚に捕
らわれた。いったいどんな奇跡が起こって彼女は僕のことなんかを好きになったのだろう。

「何でもないよ。じゃあ行こうか」

「はい」
 奈緒は自然に僕の手を取った。「行きましょう。昨日と違ってゆっくりできる時間じゃ
ないですよね」

「そうだね」

 僕たちは電車の中で初めて付き合い出した恋人同士がするであろうことを忠実に行った。
つまり付き合い出した今でもお互いのことはほとんどわかっていなかったのでまずそのギ
ャップを埋めることにしたのだ。奈緒の腕は今日も僕の腕に絡み付いていた。

 とりあえず奈緒についてわかったことは、彼女が富士峰女学院の中学二年生であること、
一人っ子で両親と三人で暮らしていること、同じクラスに親友がいて下校は彼女と一緒な
こと、ピアノを習っていて将来は音大に進みたいと思っていること。

 何より僕が驚いたのは彼女の家の場所だった。これまでいつも自宅最寄り駅の前で待ち
合わせをしていたし、最初の出会いもそこだったから僕は今まで奈緒は僕と同じ駅を利用
しているのだと思い込んでいたのだ。でも奈緒の自宅は僕の最寄り駅から三駅ほど学校と
反対の方にある駅だった。

「え? じゃあなんでいつもあそこで待ち合わせしてたの?」

「何となく・・・・・・最初にあったのもあそこでしたし」

「じゃあさ。昨日とか相当早く家を出たでしょ?」

「はい。ママに不審がられて問い詰められました」

 奈緒はいたずらっぽく笑った。

「最初に出会った日にもあそこにいたじゃん?」

「あれは課外活動の日で親友とあそこで待ち合わせしたんです。彼女は奈緒人さんと同じ
駅だから」

 ちゃんと確認すればよかった。僕は彼女にわざわざ自分の最寄り駅で途中下車させてい
たのだ。


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