31:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/11/29(土) 00:35:17.99 ID:sji++a7Lo
翌朝、登校の支度を済ませて僕が階下に下りていくと、珍しく父さんと母さん、それに
妹まで既にキッチンのテーブルについて朝食を取っていた。
昨日僕が眠ってしまった後の遅い時間に両親は帰宅したのだろう。この様子だとあまり
眠れなかったではないかと僕は両親を見て思った。
「おはよう奈緒人」
「おはよう奈緒人君、何か久しぶりね」
両親が同時に僕に微笑んで挨拶してくれた。久しぶりに両親に会って笑って声をかけて
くれるのは嬉しいのだけど、こういう時いつも僕は妹の反応が気になった。
父さんはともかく母さんは常に僕に優しかった。母さんが自分の本当の母親ではないと
知らされたとき、僕は母さんが途中で自分の息子になった僕に気を遣って優しく振る舞っ
ているのだろうとひねくれたことを考えたこともあった。
でもそういう偽りならどこかでぼろが出ていただろう。それに気に入らない義理の息子
に気を遣っているにしては母さんの笑顔はあまりに自然だった。
それでいつの間にか僕はそういうひねくれた感情を捨てて、素直に母さんと笑顔で話が
できるようになったのだった。今の僕は父さんと同じくらい母さんのことを信頼している。
ただ唯一の問題は妹の明日香だった。無理もないけど、明日香は昔から自分の母親を僕
に取られたように感じていたらしい。僕が母さんが義理の母親だと知ってからも母さんを
信頼し、むしろ前よりも母さんと仲良くなってから、明日香は僕のことをひどく嫌って、
反抗的になった。
挙句に服装が派手になり髪を染めるようになり遊び歩くようになったのだった。僕とは
違う自分を演出するつもりだったのだろうけど、もちろん母さんと明日香の関係において
もそれは良い影響なんて何も及ぼさなかった。
やがて母さんは明日香の生活態度をきつく注意するようになった。母さんに「何でお兄
ちゃんはちゃんと出来てるのにあんたはできないの」と言われた後の妹の切れっぷりは凄
まじかった。その時明日香はやり場のない怒りを全て僕に向けたのだった。
こういう両親と過ごす朝のひと時は、妹さえいなければ僕の大切な時間だったのだけど、
両親の僕に向けた柔らかな態度に明日香はまた一悶着起こすのだろうと僕は覚悟してテ
ーブルについた。
「おはよう」
僕は誰にともなく言った。妹がそう思うなら自分に向けられた挨拶だと思ってくれても
よかった。
「おはよお兄ちゃん」
明日香が柔らかい声で言った。「今日は早く出かけなくていいの?」
え? 一瞬僕は自分の耳を疑った。朝こいつから普通に挨拶されたのは初めてかもしれ
ない。僕は一瞬言葉に詰まった。それでも僕はようやく平静に妹に返事をすることができ
た。
「う、うん。別に早く出かける用事はないし」
「ないって・・・・・・待ち合わせはいいの?」
そういえば妹は僕と奈緒が待ち合わせの時間を変更したことを知らないのだった。きっ
といつもと同じ時間に待ち合わせするものだと思っているのだろう。でも何で明日香が僕
とポ奈緒の待ち合わせの時間を心配するのか。
一瞬、僕の脳裏に昨日の妹の言葉が思い浮んだ。
「明日からはもうギャルっぽい格好するのやめたの。お兄ちゃんのためにこれからはずっ
とこの路線で行くから」
その言葉を思い浮かべながら改めて妹を眺めると、昨日の今日だから髪がまだ黒いのは
当然として、中学校の制服まで心なしか大人しく着こなしているように見えた。とりあえ
ずスカート丈はいつもより大分長い。
「別に・・・・・・それよりおまえ、その格好」
「昨日言ったでしょ? お兄ちゃんがこっちの方がいいみたいだからこれからは大人しい
格好するって」
明日香は両親の前で堂々と言い放った。
僕が妹に返事をするより先に母さんが妹に嬉しそうに話しかけた。
「あら。明日香、今朝はずいぶんお兄ちゃんと仲良しなのね」
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