9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/12/02(火) 23:57:35.53 ID:JOjBTq8eo
(……よしっ)
僕は一旦立ち止まり、両手でぱんっと頬を叩いて気を引き締めた。それから再び歩き始める。
曲がり角が近づくにつれて、ホールの方から微かに話し声が聞こえ始めてきた。
この先を曲がって更に進んでいけば、超高校級の生徒の皆が僕を待っている。
圧倒されてしまいそうだけど……運での入学とは言え、僕だって新入生の一人なんだ。
堂々とはいかなくても、気後れなんてせずに普通に振る舞えばいい。
緊張と期待を携えながら、曲がり角の目の前までやってくる。
そして、意気揚々とその曲がり角を抜けた――途端、僕の視界は大きく揺らいだ。
「――いだっ!?」
その視界はぐるぐると歪んだ後に暗転し、目を覚ましたら見覚えのない教室にいた――なんて、そんな漫画のような展開になる事は全然なく。
体勢を崩した僕の身体は、勢いよく冷たい床に打ちつけられた。……つまる所、情けない事に僕は転んでしまったんだ。
「いてて……」
咄嗟に手を床につけたお陰で、強く打ちすぎたり顔をぶつける事はなかったものの……それでも、やっぱり痛いものは痛い。
何とも間抜けな転び方だったと思う。転んだ本人でさえそう思うんだから、傍から見たら一周して鮮やかに見える程だったんじゃないだろうか。
……けど、どうして転んでしまったんだろう。何かを踏んだ感触なんてなかったし、突起に足を引っ掛けてもいないのに……。
そうなると、僕は何もないただの平面で転んでしまったという事になる。
(最悪だ……)
角を曲がる前ならまだしも、ここで転んでしまうなんて……もしかしたら、今の光景を誰かに見られたかもしれない。
転んだ時に出した声だって、聞こえてしまったんじゃないだろうか。もしそうだったとしたら、余りにもかっこ悪すぎる……。
幸先悪すぎだろ……一応、超高校級の幸運のはずなのに。結局僕は今まで通り、不運のままなんだな……。
「……?」
と、重く溜め息を吐きながら、ゆっくりと身体を起き上がらせようとしたその時。
ホールの方から、足音が段々こちらへと近づいてくるのに気がついた。
44Res/102.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。