過去ログ - 【小ネタ版】幻想にのたうち給う【幻想入り】
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160: ◆eohhG1Orlc[saga]
2015/11/12(木) 19:28:31.98 ID:ANEQ+UFOo

阿求「ずるいと思います」

刑「そうかな」

 何処か遠くを見るような視線をオレに向けた阿求ちゃんはそう言って、寂しそうに目を伏せる。

 まぁ、ずるいだろうね。口ではとぼけて見せたけれど、覚えているというのにそれを知らないふりでいる、なんて。

 でも、本当なら思い出す必要もなくて、既知感を覚える必要もなくて、ただ何も知らないオカルトマニアな人間であれればなんて、オレは思うから。

――それはきっと、オレという存在には決して許されない願いなのかもしれないけれど。

刑「幻想に走り給う者……か」

 ポツリと口から溢した言葉は、オレに架せられた名称だ。

 これが殆どの答えなんだろう。これを知ることになった八雲 紫と話した時に、溢れるようにオレだった者達の記憶が流れ込んできた事は記憶に新しい。

 これまでのオレがどれだけの事をして来たのか。未知の結末である今を得る為に、どれだけの繰り返しをしてきたのか。

 時に早苗と殺し合うこともあった。オレが選択を間違えて、早苗に信仰が集まり過ぎて、オレが最後に戦った妖怪の排斥を謳う者達の掌の上で踊って、そして喰らい合うように互いを傷つけ合って。そうして繰り返したこともあった。

 時に阿求ちゃんを犠牲にしてしまうこともあった。最後のオレ以外には、知識しかなかった。力を持たない人間は、やはり時として乗り越えられない現実もあったりする。だから彼女を護れなかった。そうして繰り返したこともあった。

 切っ掛けを作ったのは、夢美だった。彼女と出逢って彼女と研究を重ねて、知ることの出来た全てを、幾多にも渡る世界の枝の中で、一箇所にしか存在出来ないものを作った。

 それが“輝くトラペゾヘドロン”であり、オレはそれに耐えうる体を得る為に、繰り返した。



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