45: ◆FLVUV.9phY[sage]
2014/12/06(土) 17:24:27.67 ID:x2ueaAjJo
何事かと思い目を見開けば、そこにはオレンジ色の優雅な魔法少女が魔女を圧倒する姿があった。
目に映る戦力差は圧倒的で、彼女自身があれだけ苦戦を強いられた魔女が、完膚なきまでに叩きのめされていく。
氷の礫も、氷の刃も、吹き荒れる吹雪も雹も難なくと防ぎ、
地を伝い全身を凍結させる冷気すらも、美しい黄色のリボンが遮断する。
沢山の同業者を見てきたという自負のある彼女の脳裏に二文字がよぎる。
即ち、『最強』。
二段式も、三段式も、四段式も。氷柱の嵐ですら眼前の魔法少女にとっては生温い攻撃でしかないのだろう。
しかし、魔女の方も必死なのだろうか、攻撃は果敢さを増していく。
先ほどまで私が戦っていたときには全く億尾にも出さなかったような攻撃方法が次々と繰り出されていく。
足元真下のピンポイントに氷筍を高速生成して串刺しを狙う。
氷柱落しに見せかけて死角から大量の氷の礫による飽和攻撃。
それだけには飽き足らず、氷柱から氷柱を生やす二段構え。
これは最早、洞穴対あの少女だ。
本質的な魔法少女と魔女の戦いとはどういうものなのかを少女は初めて知る。
彼女がそれまで見て、戦い、感じてきた修羅場など比較にならない壮絶さがそこには有った。
「はは、あははっ、あたし達って、魔法少女って、あんなになれるものなの?」
思わず、少女は言葉を零した。
感嘆か、恐怖か。今の少女には自分の感情の区別など全くつかなくなっている。
ただ、ただ、目の前の光景に圧倒される、それだけだ。
突如、宙を飛び回っていたはずの少女の体がピタリと静止する。
それはまるで、視えない足場に立っているかのようだ。
左手を顔の前まで持ち上げて、開いていた手を軽く握る。
二度ほど繰り返しその動作を行うと、三度目に思い切り『握り締めた』。
その握られた拳は血管が浮き上がるほどに強く握りこまれていて、
見ているだけのはずの少女までが奥歯に力を入れる。
向日葵色のその少女が拳を握った直後にこの氷の洞穴全体が突如として高音を発する。
ピキッ、ピキッ、と鳴る音はまるで、そう『グラスに入れた氷が割れる』ような音だ。
そして、少女は見渡して気がつく。
いつの間にか張り巡らせられている糸のような何かに。
それは魔女の体すら例外ではなく、それどころか、自身の体すら巻き込んでいるという事実にも、だった。
そう、いつの間にか少女の糸は彼女のソウルジェムを覆い尽くしていて、それが引かれるということは、つまりは。
彼女のソウルジェムが圧し潰される、と云うことを意味していた。
薄れゆく意識の中でその少女が最後に見たのは、薄らとした微笑みを湛える向日葵の影だった。
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