55: ◆FLVUV.9phY[sage]
2014/12/06(土) 17:38:58.50 ID:x2ueaAjJo
悲劇の始まりは、いつなのだろうか。
佐倉杏子は考える。こんなことになったのは、なってしまったのは何が悪かったのだろうか、と。
大本の原因は分かっていた。彼女たちが暮らす教会に魔女が結界を張ってしまったことだ。
そこに口づけを受けて、正気を失った人たちが集まり、教会を燃やして集団自殺しようと本を集めて油をまいたこと。
その後始末をする前に杏子の父がその場に現れてしまったこと。
そして、そこに立つ魔法少女の衣装に身を包んだ杏子の姿を見られてしまったこと。
ただ、タイミングが悪かっただけなのだろう。
だけれど、その光景は傍目から見たら、気を失った人たちと油まみれの本を冷めた目で見降ろす一人の少女、としか映らない。
つまりは、少女が加害者で、倒れている人たちが被害者だ。
例え事実は違っていたとしても、人の印象は変え難い。
それが実の父で、神を信じる聖職者だとしたら、なおさらだった。
壊れてしまった人は、どこまでも残酷になれる。何故ならば、自分が残酷だという事実に気がつけないのだから。
そう、佐倉杏子はどこまでも残酷な扱いを実の父から受けることになってしまう。
ある時は怒りに任せて殴り倒された。それなのに涙を流すのは父だった。
ある時は酔いに任せて殴り倒された。それなのに涙を流すのは父だった。
ある時は存在を認められなかった。
ある時は死んだ虫を眺めるような目で見つめられた。
ある時はひどく罵倒された。だというのに涙を流すのは父だった。
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