9: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/12/11(木) 23:15:15.24 ID:ey41gLLW0
「お待たせいたしました」
アタシの注文を、店員さんが持って来てくれた。
ありがとうとお礼を言い、番号札を返す。
フィッシュバーガーを頬張りながら彼にもらった名刺を何となしに見ると、肩書きが目についた。
「シンデレラ……プロダクション?」
「ああ、僕、アイドルのプロデューサーをやってるんだ」
「へえ……」
何というか、意外だ。
アイドルのプロデューサーなんてのはもっと業界人っぽい空気を持っているものだと思っていたが、阿良々木さんは一見何処にでもいそうなサラリーマンだ。
まあ、アタシの偏見でしかないんスけど。
それに、アタシみたいな人間にとってはアイドルだなんておとぎ話の住人と同じようなものだ。
これはきっとアタシに限った話じゃない。
華やかで、輝いていて、人々の羨望の的となる人達は、元々住んでいる世界が違う。
アタシを初めとするいわゆる『一般人』にとってテレビの液晶越しに映るのは、それが例え同じ人間だとしても、アニメや映画と一緒で作り話や寓話の世界でしかない。
別に卑屈になってる訳じゃないんスけど、皆大体同じことを思ってるんじゃないスかね。
「どうだ荒木、アイドルやってみないか?」
「はい?」
何を言ってんスか、この人は。
アタシがアイドルなんてあり得ないでしょう。
「冗談で言ってるんじゃないからな。うちは平社員にもスカウト権利があるし、何より荒木は可愛いからな」
「可愛いって……あの、阿良々木さん?」
「うん?」
「視力、大丈夫っスか?メガネ貸します?」
「いやいい、メガネなら間に合っている」
ほらこの通り、とカバンから伊達眼鏡を取り出し装着する阿良々木さん。
何とも奇抜なデザインの眼鏡……っていうか鼻眼鏡だった。
妙に似合っているのがおかしい。
いや、そもそもそういう事じゃないんスけども。
「上条がいらないって言うのにくれるからな」
上条……眼鏡……上条春菜?
テレビもあんまり見ないアタシでも知ってるアイドルだ。
ということは、そこそこに大きなプロダクションらしい。
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