42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/12/14(日) 01:27:53.41 ID:QcmbvjXlo
鍵を開けて玄関扉を潜ると玄関はしんとした空気を漂わせていた
しかし居間に通じる廊下に光が漏れてきているので
家人がいないという訳ではないのだろうが……
出迎えがないことを少し寂しく思う自分に愕然としつつ
自室としている書斎へと迷いなく進んでいく
塵ひとつ見当たらないほど綺麗に掃除された廊下は
伴侶たる女性の生真面目さを表しているようだった
書斎と言っても京太郎のそれはあまり本がない
読書家とは言い難く、デジタル的な研究をあまりしないという
性格から来ているものだろうが、それ以上に目を引くのは
モルタル塗りの壁にビッシリと貼られた顔写真と
新聞や雑誌記事の切り抜きである
殆どのものが赤いペンでバツ印が付けられており
写真はそこに写った顔が判別できず
記事はまた、詳細を読み取れなくなっていた
京太郎「(……もうこの部屋に来ることもなくなるのかな……)」
備え付けの背凭れの低い椅子に腰かけ
丸一日振りに愛用するタバコに火をつけた
ゆらりと煙が立ち上るのを見ながら、手探りで灰皿を手繰り寄せる
このタバコは中々に珍重な品なのだが、如何せん味が悪い
雑味が多く無駄に濃いのだ
フラストレーションを溜め込んだ頭にこれでは
余計にストレスが襲い掛かってきてもおかしくはない
京太郎「(だけど……これを吸ってる時は忘れらるんだ)」
今も瞼を閉じれば見える、焼き付いて離れない“向こう側”の景色
自身に合わないタバコの味はいつだって京太郎を引き戻してくれる
輝きに満ち溢れた世界の誘惑から、こちら側の世界へと――
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