70:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:36:32.73 ID:DL0z8tZuo
プロデューサーさんは書類のコピーをデスクに置くと、傍へ立って説明を始めた。
「来月、期末テストが終わってから春休み入るよね。
春休み期間にレッスンスタジオ抑えたんで……これスケジュールなんだけど」
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2014/12/20(土) 07:36:58.87 ID:DL0z8tZuo
彼の言ったことをちゃんと意識したのは、事務所を出て、夜に身体が冷えてからだった。
歌うのは好き。でも、誰かに聴いてもらうなんて、夢にも思わなかった。
きっと、彼が私の歌を最初に聴いてくれるのだろう。
肩に、支えてくれた感触が、ぽんと叩いた感触が、
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2014/12/20(土) 07:37:35.96 ID:DL0z8tZuo
――――
シャリシャリ、クルクル――ベッド傍のスピーカーから響くリズムに合わせて、
忍ちゃんの手指は器用にりんごを剥いた。
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2014/12/20(土) 07:38:31.51 ID:DL0z8tZuo
「誕生日プレゼントがりんごっていうのもお母さんらしいけど、こんなに一人で食べられないって」
「まあ、そうだね」
傍に開けてあるダンボールの中には、いっぱいに赤いりんごが詰まっている。
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2014/12/20(土) 07:39:04.13 ID:DL0z8tZuo
耳付きのりんごまで食べて二人分の皿が空になると、忍ちゃんは伸びをした。
「んー、テストのあとは開放感があるね」
「私たちは、これから忙しくなるけど」
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2014/12/20(土) 07:39:31.21 ID:DL0z8tZuo
「それって、もしかして」
「シングルCDの曲を歌わせてもらえるかもって、プロデューサーさんが……」
忍ちゃんは一瞬あっけに取られたように口を開けた。
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2014/12/20(土) 07:40:29.97 ID:DL0z8tZuo
――――
ホワイトデーの今日を境に三週間ほどの春休みが始まる。
私はなぜだか気分が浮ついていた。
今までに一度だってこんな日があっただろうかと思うほどに。
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2014/12/20(土) 07:41:09.65 ID:DL0z8tZuo
事務所のドアを開けると、プロデューサーさんと忍ちゃんの話し声が耳へ入ってきた。
「マドギワさんには大人の事情ってのがあるからね」
「だから、言ったように……」
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2014/12/20(土) 07:41:40.48 ID:DL0z8tZuo
「やあ、佐久間さん」
「今日はよろしくお願いします……」
プロデューサーさんのデスクの上はいつもより散らかっていた。
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2014/12/20(土) 07:42:11.08 ID:DL0z8tZuo
プロデューサーさんは鞄を脇へ抱えて、私を促した。
事務所を出てから、彼がマフラーを巻いていないことに気がついた。
「マフラー、しないんですね」
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