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2014/12/20(土) 07:38:31.51 ID:DL0z8tZuo
「誕生日プレゼントがりんごっていうのもお母さんらしいけど、こんなに一人で食べられないって」
「まあ、そうだね」
傍に開けてあるダンボールの中には、いっぱいに赤いりんごが詰まっている。
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2014/12/20(土) 07:39:04.13 ID:DL0z8tZuo
耳付きのりんごまで食べて二人分の皿が空になると、忍ちゃんは伸びをした。
「んー、テストのあとは開放感があるね」
「私たちは、これから忙しくなるけど」
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2014/12/20(土) 07:39:31.21 ID:DL0z8tZuo
「それって、もしかして」
「シングルCDの曲を歌わせてもらえるかもって、プロデューサーさんが……」
忍ちゃんは一瞬あっけに取られたように口を開けた。
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2014/12/20(土) 07:40:29.97 ID:DL0z8tZuo
――――
ホワイトデーの今日を境に三週間ほどの春休みが始まる。
私はなぜだか気分が浮ついていた。
今までに一度だってこんな日があっただろうかと思うほどに。
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2014/12/20(土) 07:41:09.65 ID:DL0z8tZuo
事務所のドアを開けると、プロデューサーさんと忍ちゃんの話し声が耳へ入ってきた。
「マドギワさんには大人の事情ってのがあるからね」
「だから、言ったように……」
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2014/12/20(土) 07:41:40.48 ID:DL0z8tZuo
「やあ、佐久間さん」
「今日はよろしくお願いします……」
プロデューサーさんのデスクの上はいつもより散らかっていた。
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2014/12/20(土) 07:42:11.08 ID:DL0z8tZuo
プロデューサーさんは鞄を脇へ抱えて、私を促した。
事務所を出てから、彼がマフラーを巻いていないことに気がついた。
「マフラー、しないんですね」
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2014/12/20(土) 07:42:43.47 ID:DL0z8tZuo
再び訪れたファミレスは混んでいた。何ヶ月か前の昼時、ここへ来たときと同じように。
代わり映えしない店内の風景。変わったのは私たち二人と、エアコンの設定温度くらいだろう。
二人がけの席に案内され、プロデューサーさんはたらこスパを、私も同じくたらこスパを注文した。
しばらくすると、テーブルにたらこスパが二皿運ばれてくる。
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2014/12/20(土) 07:43:27.48 ID:DL0z8tZuo
「忘れないうちに」
「た、食べ終わってから、開けさせてください」
私が急いでフォークを手繰ると、プロデューサーさんは笑った。焦らなくても逃げないよ、と。
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2014/12/20(土) 07:44:08.40 ID:DL0z8tZuo
「は、はい……ぴったりです」
彼の両手の離れた私の左手首には、時計の赤いバンドが巻き付いていた。
左手をそっと耳元へ近づけると、心臓の鼓動のように時間の落ちる音がした。
83:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2014/12/20(土) 07:45:09.81 ID:DL0z8tZuo
――――
春休み期間のレッスンはトレーナーさんと、私とプロデューサーさんの三人で行われた。
初めの二、三日はプロデューサーさんのことを意識して集中できずにいたけれど、
今はそれよりも、傍に居てくれることがこの上なく嬉しかった。
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