3: ◆Freege5emM[saga]
2014/12/20(土) 21:45:19.29 ID:dlUov/GTo
●02
「ねー、奏ちゃーん。オフってどう過ごせばいいん……?」
「オフをどうやって? 珍しい悩みね」
ある日のレッスン上がり。
周子から向けられた言葉に、私はいろいろな意味で驚いた。
「実家では、休みって店を手伝う日だったんだよねー。
しかも、あたしは東京って地元じゃないから、あんま遊び歩く場所も知らなくてさー」
「それで、私に? 確かに、私は生まれも育ちも東京だけど」
休みの過ごし方が分からない、という人間がいるとは聞いていたけれど、
まさか周子がその疑問を持っているとは、思わなかった。
「いざ、遊ぶ所、と言われるとね。周子が楽しめそうなところ、どこかしら?」
「観光名所めぐりするわけじゃないんだから、気楽でいいよー。
あたしだって京都生まれだけど、京都の名所、全部は行ったことないし」
「地元だとそういうこと、あるわね。いつでも行ける所は、意外と行かないもの」
私は、周子がどんなところに行ったら楽しいだろうか、考えていた。
その時、私はごく自然に、私と周子が二人きりで歩いている風景を思い浮かべていた。
「どうせなら、今度いっしょにお出かけしてみる?」
「さすが奏ちゃん、話がわかる♪ ま、あたしは最初からそのつもりだったけど!」
周子の表情が、言葉とともにほころびる。私もつられて、つい頬が緩む。
大人びた澄まし顔なんて、していられない。
「オフは、奏ちゃんとデートかー。ふふーん♪」
周子がくちびるから漏らした声は、本気にも戯れにもとれた。
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