5: ◆TiRzdTjl.s[saga]
2015/01/02(金) 07:00:59.06 ID:nHKi7DHO0
幸い、生徒たちにも先生方にも自分の姿は見えているようだった。
しかし、自分が生きているという実感が薄いように感じた。
今までも「生きている実感」なんて感じたことはそうそうないのだが、今はそれがたまらなく欲しかった。
一時間目に自分が副担任をしている2-Bの授業が入っていたので教室に向かうと、よく質問に来てくれる熱心な生徒が談笑を持ち掛けてくれた。
そんな些細なことがとても嬉しく思えた。
話題は、今日は晴れているのにバイク通勤ではなかったことについてだ。
よく見ているなと思った。
夢のことについて話したかったが、他人の見た夢ほど荒唐無稽な話はないと思うので、バイクの調子が悪いということにしておいたら、バイク好きな生徒が数人、話に食い付いてきた。
現状自分のバイクは元気なので、過去の故障をまるで今日の出来事のように語ってみた。
セルがどうの、キャブがどうのと言う生徒たちに、本当にバイクが好きなんだなと感じたが、教師らしく、バイクもいいが数学も勉強しろよと言ったところで授業開始の鐘が鳴り、生徒たちは席に戻り始める。
例の熱心な生徒が、今日の先生は機嫌がいい、笑顔だと言ってきたが、今朝の悪夢もあるのでそんなことはないとだけ返しておいた。
今日は授業にも、雑談にも生きている実感が湧き、普段は眺めていることが多い部活も指導を積極的に行えた。話しかけてくる人の数もいつもより多い気がした。
どうせ自分は一度死んだ身だ。
ならば多少楽しんだところで誰も文句はあるまい。
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