過去ログ - 陣内崎市の戦略核 -SS速報VIP

過去ログ - 陣内崎市の戦略核

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123: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:02:08.32 ID:7P95HhNc0

　技量や技術を超越したその速度。なんとか反応することには成功し、弾丸の嵐を硬化で防いだけれど、その圧倒的な物量の前にがりがりと端々を削られてしまう。

「敵は消せ、って言われてるの。敵かどうかわからなかったら、とりあえず消せって言われてるの」

124: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:02:45.85 ID:7P95HhNc0

「やるしかないのか……？」

　体勢を立て直しながら呟く。
　眼前で銃口を向けてくる阿片を見れば、既に答えは出ているようなものだった。

125: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:04:40.94 ID:7P95HhNc0

「逃がさない、のっ！」

　僅かに後ろへと重心をかけただけでこれだ。阿片は壁を蹴り、天井を蹴り、おまけに時間停止をも使って、一瞬で俺の背後で銃口を向けてくる。
　ぎらぎらと輝く瞳。まるで戦いが楽しくて仕方がないというような。

126: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:05:36.76 ID:7P95HhNc0

　これは捨て置けない。応戦しようと拳を振りかぶった次の瞬間には、阿片の脚は狙いを首から右腕に変え、ぎっちりと絡み付いていた。
　骨が軋みをあげる。苦し紛れに、小柄な阿片の体を地面へと叩きつけようとするも、一瞬で阿片は俺から距離をとっている。

　銃口を向けながら。

127: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:06:10.64 ID:7P95HhNc0

　当然の空振り。しかし俺は壁を前にしている。阿片の居場所は考えるまでもなかった。

　再び弾丸を浴びながらの裏拳。掠った感触はあったが、掠ったに過ぎない。そのまま飛び出していく。

128: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:07:07.83 ID:7P95HhNc0

　力任せに殴っていたのでは当たらない。体が動いたそのときには、既にやつはその場にいない。
　反転しながら蹴り。今度こそその小柄な体を捉える。遠心力のままに吹き飛ばし、扉をぶち抜いて阿片は飛んでいくが、倒せたという確信はなかった。
　追撃という選択肢は当然である。飛び出した俺の背後に気配。振り向くが、遅い。

129: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:07:43.53 ID:7P95HhNc0

「『ここ』が柔らかくなかった人は、ちょっと知らないの」

　眼球。

130: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:08:32.45 ID:7P95HhNc0

　だが。
　稀有。

「死ぬもんかよ！」

131: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:09:32.92 ID:7P95HhNc0

「でもでも凄いの！　おにーさん、目ん玉撃っても死ななかったの！　わちきびっくりしちゃった！
　うんうん！　おにーさん強い！　わちきがあった中で、六番目くらいに強いと思うの！」

　片手に余る程度には、か。

132: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:10:01.89 ID:7P95HhNc0

「あははーはー！　わちき撃ってないよ！　撃っていないもん、ないったら！」

「時間停止……そりゃそうか、そりゃあそうだよなぁっ！」

133: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:10:36.15 ID:7P95HhNc0

　吼える。と同時に胴回し。空を切った一撃が壁を崩壊させようとも、俺は構わず次撃を、それもまた回避されればさらなる追撃を、ひたすらに放ち続ける。
　爆砕に次ぐ爆砕。土煙舞う中、ダッフルコートの姿は見えないけれど、心底楽しそうな嬌声は止まらない。

「あはーはーはー！　いっぱいいっぱいお仕事なの！」

134: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:11:03.53 ID:7P95HhNc0

　稀有を守りたい。守りたかった。俺はあいつの隣にいたいだけなのだ。あいつの笑顔を見ていたいだけなのだ。それを守ることが俺の幸せなのだ。

「誰だ！　誰が一体それを邪魔した！？」

135: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:11:41.00 ID:7P95HhNc0

「あはーはーはー……」

　左腕がぐちゃぐちゃになった阿片が立っている。右腕だけはなんとかカバーしたのか、ぶらりと垂れ下がってはいるが、健全に見える。

136: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:12:11.60 ID:7P95HhNc0

「当たり前なの！　当たり前に決まってるの！　敵は殺せって言われてるの！　言われたことはやらなくちゃ、めっ、なの！」

　がたがたと阿片は震えていた。心底楽しそうな口調で、表情で、声を張り上げているのに、血まみれの顔面は蒼白に見える。高揚した肉体は寒そうに見える。
　決してこれまでの異常の延長線上にないのは明らかだ。阿片のことを慮る義理など皆無だが、そんな彼女の姿に一抹の不安を覚えるのも確か。

137: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:13:07.00 ID:7P95HhNc0

「結果が、結果が全てだから、過程なんてどうでもよくて、そうなの、言われたことは、きちんと、守って、なの、なの、そうなの、結果を出さないと、言いつけを守らないと、そのためには、わちき、なんだってやるから、やってみせるから！

　お父さんいやなの、地下室は暗いの、怖いの、息苦しいの！
　ごめんなさい、ごめんなさいだから、今度はちゃんとお方付けするから、おもちゃばこに戻すから、だから、おしおきは、地下室はやなの！

138: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:14:09.37 ID:7P95HhNc0

　俺は何事かを喚くそんな阿片の姿を、ただ呆然と見ているだけしかできなかった。

　そうすべきでないことはわかっているのに。
　他にすべきことがあるのはわかっているのに。

139: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2015/02/02(月) 01:16:05.63 ID:7P95HhNc0
―――――――――――――――――
今回の投下はここまでです。

少し時間が開いてしまい申し訳ありませんでした。
そして最後の「行程」は「工程」の誤字となります。

140:名無しNIPPER[sage]
2015/02/02(月) 01:30:47.01 ID:WGxAaqU70
乙

141:名無しNIPPER[sage]
2015/02/02(月) 02:03:13.51 ID:h2CygmYT0
乙！

142:名無しNIPPER[sage]
2015/03/05(木) 05:50:24.84 ID:YcRsJ/4xo
保守。危うく落ちるところだわ。

143:名無しNIPPER[sage]
2015/03/29(日) 04:27:59.84 ID:FeFuPmkDO
そろそろ2ヶ月っすね

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