48: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/18(日) 00:49:09.91 ID:uP2qnu460
町は落ち着いていて、それでいて活気があり、人々の笑顔で溢れておりました。
しかし妾の心は正反対に、ズブズブと深い沼に沈んでいくようでした。
全ての景色が灰色に見えます。
道行く人々の笑顔一つですら、妾を馬鹿にする顔に見えました。
店先で談笑する婦人の笑い声が、妾を嘲笑する声に聞こえました。
49: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/18(日) 00:50:56.11 ID:uP2qnu460
そもそも……。
イッタイ此処は……。
……何処なのでしょうか……。
50: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/18(日) 00:52:36.89 ID:uP2qnu460
……妾はチイちゃんと二人、此の場に居た訳なのですが。
いつ此処に来たのか、何故此処にいるのか、サッパリわかりません。
まるで此の場所、此の空間が、此の世のモノでは無いかのようで……。
51: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/18(日) 00:54:25.73 ID:uP2qnu460
「覚えていないっていう事はネ、知っていてもドウって事無いって事さね」
男の声が聞こえました。
温かい、優しい声でした。
52: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/18(日) 00:56:24.52 ID:uP2qnu460
「……ドウって事、無い?」
「そうさ。要らないから忘れるのさ」
「……要らない事は、無いでしょう」
53: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/18(日) 00:59:01.52 ID:uP2qnu460
「……つまり……チイちゃんの事も、この場所の事も……知っていてもドウって事無い……要らないからスッカリ忘れてしまった、ト……?」
「イヤ確かに。でっかいのは脳味噌もでっかいと見えるネ。良く出来たモノを持っている……」
「ハア……それは、ドウモ……」
54: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/18(日) 01:01:26.40 ID:uP2qnu460
「何処を見ている? 此処だよ、おうい」
見渡しても、婦人が二人居るだけです。
男の声は聞こえますが、男の姿が見えません。
婦人の一人は酷い痘痕(あばた)面で、痒そうに頬を指先で引っ搔いておりました。
55: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/18(日) 01:03:25.84 ID:uP2qnu460
目の前で、またも可笑しな事が起こってしまったのですから。
56: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/18(日) 01:05:51.22 ID:uP2qnu460
痘痕面の婦人の痘痕が、モゾモゾと動き始めたのです。
痘痕の一つが奥に引っ込んだかと思うと、ポッカリ穴が空きまして、そこからギョロリと目玉が現れました。
痘痕がポツリと二つ空きますと、そこから鼻息が聞こえました。
グンと横一文字に動きまして、引き裂かれるヨウに溝が出来ますと、舌がデロリとはみ出しました。
57: ◆eUwxvhsdPM[saga]
2015/01/18(日) 01:07:39.44 ID:uP2qnu460
……アハハハハハハハハハハハハハ……。
妾は笑いが止まりませんでした……。
痘痕も笑窪(えくぼ)という言葉が御座いますが、まさか痘痕に笑窪があるナンテ……。
思いもしなかったものですから。妾はモウ可笑しくてオカシクテ……。
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