過去ログ - キョン「ペルソナァッ!」 クマ「ザ・ゴールデンクマ!」
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112:名無しNIPPER[saga]
2015/01/08(木) 18:44:02.63 ID:YFKlq4sxo

「どうします?」

と、喜緑さんが、俺に訊ねかけてきた。何故俺に言うんですか。現状をまともに理解してるのは、どっちかっていうとあなたの方なんじゃないんですか。

『あっ、悪魔が、動きます! 気をつけてください、まだ、里中さんのゲージは、半分位しか回復してません!』

朝比奈さんの声が降り注ぐ。ゲージって何だ。朝比奈さんの目には、里中の、精神力の形とやらの回復度が、ゲージ制で見えてるのか。それ、俺にも見せてくれませんか。
それはともかくとして、実際、敵は動き始めた。大地を踏んでいた両足を、交互に前に差し出しながら、のっそりと俺たちの方へと歩いてくる。―――あの、射撃攻撃の射程内に、俺たちを捉えようとしているんだな。直感で、そう理解する。

「く……ペルソナさえ出せれば……」

迫り来る巨体と距離をとりながら、里中がそう漏らす。だが、状況は、里中が言うよりもシビアに思えた。何しろ、こちらがペルソナを出し、敵の射程範囲に入れば、問答無用でペルソナカードを破壊されてしまうのだ。迂闊に攻撃はできない。かと言って、敵が接近してくるのも困る。

「……では、私が行きましょう」

と、あちらを立てればこちらが立たず、といった具合の思考を繰り返す、俺の耳に、届いてきたのは、喜緑さんの声だった。迫り来るルキフグスに向かい、真正面から、ペルソナのオーラを放つ喜緑さん。

「後は、任せます」

と、最後に、俺と目を合わせ、そう呟いた直後、喜緑さんは駆け出した。俺の目にも、おそらく、里中の目にも止まらないほどのスピードだった。やはり、彼女も、長門や朝倉と同じ、ヒューマノイド・インターフェースだった、という訳か。
とにかく、彼女は凸凹の発生した校庭の大地を駆けた。傍らに、巨大な鎌を持った、女性型のペルソナのビジョンを滲ませながら。

「行きなさい―――『ジェンマ』!」

俺がこれまで生き、見てきた中で、喜緑さんが、言葉の語尾にエクスクラメーションマークを付けたのは、今回が初めてだった。
喜緑さんの肉体から放たれたペルソナは、手の中の鎌で空中を二度、三度ほど掻き乱した後、その柄モノを上段に構え、ルキフグスへと接近した。ルキフグスが、迫り来る喜緑さんのペルソナに向けて、左手を突き出す―――それと同時に、喜緑さんのペルソナは、突如、体中から、紫色の煙を吐き出した。
一瞬で、靄の中へと飲み込まれる、ルキフグス。それは、まるで煙幕のように、俺、里中の二人と、ルキフグスの間に広がる空間を、紫色に染めた。
そこで、俺はようやく気づく。
喜緑さんは―――囮になったんだ。


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