10: ◆EhtsT9zeko[sage saga]
2015/01/10(土) 22:00:24.69 ID:2i7hE443o
「ふぃぃ、ようやく終わったよ…」
その晩、アヤがそんな声を漏らしながらホールへと戻ってきた。
「あぁ、お疲れ様です」
ソフィアがアヤに声をかけながら、トレイの上にあったグラスに氷を入れ、アヤが好んで選んでくるバーボンを注いでテーブルに置く。
「ありがと」
アヤはソフィアの肩をポンっと叩きながらイスに腰掛けると、グラスをグイっとあおって大きくため息をついた。
「ふぅぅ…腹減った」
「まだ暖かいから食べて」
私は日報を打っていた手を休めて、テーブルに運んできておいたアヤの分の夕食を並べる。
アヤはよほどお腹が空いていたのか、並べ終わる前から細切れにしたサイコロステーキを指先でつまんで頬張り、
「んー!うまい!」
と幸せそうな笑みを浮かべる。
「もう。行儀悪いよ」
顔をしかめてフォークを差し出してあげるけど、アヤはどこ吹く風でヘラヘラと笑った。
アヤが食事を始めたので、私は日報打ちに戻り、ソフィアも来週のスケジュールの確認へと戻った。
日報にはその日使った食材や、消費した燃料、エネルギースタンドの代金だったり、
あと、月末に引き落とされる水道や電気なんかの料金の支払いに回す分の金額を細かく入力していき、最後にその日の予算と合わせて確認して記入する。
食材に関しては毎週大量に買い込む分の代金を七日分に分けた金額になるけど。
ソフィアのスケジュール確認は、来週掛かる予算を計算して運営全体の予算からその分を確保しておくのに必要なものだ。
ソフィアが来るまでは、これをアヤと私の二人でやっていた。もちろんアヤは私に出来ない車や船の整備に、
その他、ペンションのメカニックも担当してもらっていたから、私が負う分も多くて、正直大変な作業だった。
ソフィアは元情報士官の分析官ということもあってか、こんな事務作業はお手の物のようで、作業はすこぶる楽になった。
あの日、ソフィアに働いて欲しいと誘ったのはソフィアのためでもあったけど、こうしているとペンションの運営面でも本当に助かっている。
もちろんソフィアにはその分のお給料を支払ってはいるけど、仕事内容の多様性と拘束時間から鑑みても相当、安いと言わざるを得ない。
それこそ、街のカフェのパートタイムと変わらないくらいだ。それでもソフィアは
「住むところと食事を提供してもらっているのにお給料なんて」
と毎回の様に申し訳なさそうな顔をする。でも、ソフィアだってもしかしたら、この先、自分のしたいことが見つかるかもしれない。
そんなとき、少しでもここで手伝っている分のお金が役にたつように、って、そう思うんだ。
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