17: ◆EhtsT9zeko[sage saga]
2015/01/13(火) 22:12:39.72 ID:2lkmBX+Eo
「ねぇ、ソフィア。ソフィアは、カレンさんのこと、どう感じてるの?」
私がそう聞いてみると、ソフィアは少し難しい表情をして黙った。なぜだか、迷っているような、そんな感覚が伝わってくる。でもややあってソフィアは口を開いた。
「私は…正直、自分のことで精一杯で、そこまで気持ちがついて来ないんです。カレンさんの気持ちを考えるよりも、自分のことが先に立ってしまって…」
あぁ、しまった…私、また…なんて不用意なことを…私は鈍いショックで体が震え出すのを感じた。
「レナ…」
アヤが声を掛けてきて、私の手をそっと握る。ハラハラと、私の弛い涙腺から涙が溢れて止まらない。だけど、そんな私をじっと見つめてソフィアは言った。
「だけど、レナさん。私もいずれ、その気持ちと向き合わなきゃいけない日が来るんだと思う。
きっと、自分の生き方を、幸せを見つけて、それに埋もれそうになったとき…私は、それを素直に享受できないって感じる日が来る。
私はそのときまで、良い意味でも悪い意味でも、一歩ずつ進んで行くしかないんだと思ってます」
ソフィアの言葉はまっすぐだった。
その視線は、私を力強く見つめているのと同時に、
ソフィアが立ち向かっていかなきゃならない捕虜になっていたときの記憶や体験をまっすぐに見つめているようにも感じられた。
でも、ソフィアは次の瞬間、クスっとその真剣な表情を笑顔に変えた。
「なんて言ってますけど、ただ単に向き合うのが恐いのかもしれません。私は私達ジオンが犯した罪を認めてしまったら、
自分の身に起きたことをただただ納得する他にないかも知れない、なんて思っちゃうところもあるんですよね」
コロニーを落としたジオンの人間だから、何をされても仕方がない…ソフィアの言葉はそう思うところがある、ってことだ。私はそれが正しいとは思わない。
いや、もちろんソフィアだってそうあるべきだなんて思ってないだろう。ソフィアから伝わって来るのは照れているような、キュッと胸が切なくなるような感覚だ。
でも、ソフィアが伝えたかったことは分かる。何をしたか、何をされたか、ってことを一次元的に考えてしまうことはないって、きっとそういうことだ。
それには優先順位もあって、同時に複数を進められないようなことで、同時に考えてしまえば心の整理がつかなくなってしまうもの。
だから、それはそれ、これはこれとして、分けて考えて行けば良いんだ、って、きっとそういうことなんだろう。
「そんなことないよ…ソフィアは、立派に立ち向かってるって思う」
私はソフィアの照れ隠しをキチンと否定してあげてから
「ありがとう、ソフィア。あなたの言う通り…私は今は、カレンを受け入れてるペンションの共同経営者で、カレンの親友のパートナー。カレンのことを考えたら、
私が気持ちを整理したいためだけに、会社の立ち上げに動き回ってる彼女に家族のことを無理に思い起こさせるのは、私が今、最優先でやることじゃないよね。
私は、まずは、カレンのサポートを全力でやるよ」
と、少しだけ整理できた胸のうちを伝えた。ソフィアは優しく笑って頷いてくれる。
アヤは…まだちょっと心配してくれているのが伝わって来るけど、でも、私の目を見て、黙って頷いた。
私は二人に、三度目のお礼を言ってお茶をすすり、顔の涙を拭って深呼吸をして、ソフィア特性のドレッシングがかかったサラダをフォークで口に運んだ。
口の中に、爽やかであっさりとした、気持ちの良い朝にぴったりの風味が広がって、力強い何かと一緒に全身に染み渡って行くような、そんな気がした。
だけど、胸の内のどこかにあるモヤモヤとした感情は、完全には消え去ってはくれなかった。
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