過去ログ - ペンション・ソルリマールの日報
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215: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/07/25(土) 22:43:46.29 ID:jFIP2x74o

 「ったく…ちょっと動けるようになったと思ったら機体いじりに走るなんざ、見上げたやつだよ」

隊長がそうあたしを皮肉ってくる。うぅ、今日は別に弄っていたわけじゃないから、それはちょっと胸が痛い。

いつもだったら軽口を返せるんだけど、今回ばかりは落ち着かなくって時間を潰していたらうっかり遅刻しただけで、開き直れる要素が一つもない。

クッと言葉に詰まってしまったら、隊長が妙な表情をしてあたしの背をバンと叩いた。

「おら、上官らしくシャキッとしやがれ」

「は、はいっ」

あたしは、隊長の言葉にそう言って背筋をただした。

考えてみれば、ジャブローからずっと軍にいて、初めて部下らしい部下、後輩らしい後輩ができるんだ。

そりゃぁ、イルマやコストナー軍曹だって階級は下だけど、そもそも所属が違うから、上下のつながりはそんなに強いってワケでもない。

これから来るパイロットは少尉だって話だから、あたしの下に組み込まれることになる。

訓練でも戦闘でも、もし隊長に何かがあったらあたしの指揮の下に動いてもらうワケだ。

 あたしが戦闘の指揮だなんて、考えもしなかったけど…でも、アヤさんがしてくれたようにあたしもしっかりしなきゃな、なんて、そんなことを思っていた。

「どんな人なんでしょうね、パイロット」

「データから読み取れることは、マジメそうなやつだ、ってことくらいだな。腕の方は、実際に目で見てみないと分かりゃしねえ」

「隊長の横柄なのに馴染めるといいんですけどね」

「生意気に。俺ぁ、お前の様なオチャラケてる上官に馴染めるかどうかが心配だよ」

息を吹き返したあたしが隊長とそんな言い合いをしていたら、不意にエアモーターの音とともにハッチが開いて、見慣れないクルーが一人、ブリッジへと入ってきた。

ずいぶんと若く見える…まだ、どこかあどけなさの残る彼は、そんな見た目に似合わずに少尉の階級章をつけている。

彼は艦長を見るなりピシッと敬礼をして言った。

「ルーカス・マッキンリー少尉、ただいま到着いたしました!」

 ふと、あたしはそんな彼を見て、何か得体のしれない感覚を覚えた。この感じ、なんだろう…?

悲しいような、さみしいような、虚しいような、そんな感情を彼が胸に抱えているのが分かる。

でも、それだけじゃない。彼から伝わってくるのは、隊長や他のクルーからは感じられない妙な心地があった。

例えて言うなら、存在感、って言うかそんな感じなんだけど…とにかく、物理的ではない意味で、“彼がそこにいる”と感じられる、“重み”の様な感覚だ。
 


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