過去ログ - ペンション・ソルリマールの日報
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36: ◆EhtsT9zeko[saga]
2015/03/09(月) 02:07:50.60 ID:ldjAGy3+o

 そこにはすでにソフィアも戻ってきていて、義手ではない方の手でぎこちなく氷水に浸したタオルを懸命に絞ってくれている。

「ソフィア、ありがとう」

私はそうお礼を言いながらソフィアの手からタオルを受け取ってきつく絞り、テオの額へと載せる。

その間にソフィアは、保冷剤をキッチンにあったタオルにくるんでテオの首元や脇の下へと押し付けた。

「お医者さんには、連れて行けませんね…」

ソフィアが深刻そうに言った。ソフィアにもわかっているんだろう。

 いずれは、ソフィアの名前で登録しなおす予定だけど、彼女は今は、私がアヤに都合してもらった「アンナ・フェルザー」の戸籍を使っている。

だから病院にも通うことが出来ていけど、それですら安全であるとは言い難い。

そんななのに、テオが医療証も戸籍もなく病院にかかれば、たちまち移民局に連絡が行きかねないんだ。

 私は、めまぐるしく思考を回転させる。

でも、地球に来てまだ1年も経っていない私には、

どんな抜け道があるのか、どんな対応がベストなのかを判断することが出来ないという事実に行き着くしかなかった。

私は、ポケットからPDAを取り出して画面をタップする。通話履歴の画面を開いて、アヤの電話番号を表示させた。

 アヤに助けてもらわないと…!

 そう思った次の瞬間、私は金縛りにあったような奇妙な抵抗感に、身を固めてしまっていた。

 いいのだろうか…?テオは、ジオン兵だ。私やソフィアは、成り行き上、アヤやオメガ隊のみんなに助けてもらえた。

でも、テオはオメガやアヤとは直接関係がないんだ。

彼を助けたいと思うのは私の都合。私の気持ち。

それをアヤが許さないとは思わないけど…ジオン兵としての私の事情を押し付けて甘えることになるんだ。

 私は…彼女にそんなことを求める権利があるのだろうか?だって…だって、私は…今はどうあれ、元ジオン兵なんだ。

コロニーを地球に落として、億を超える人々を殺して、地球を侵略した一派の人間なんだ。

私も、テオも…ソフィアも…自分たちの都合で地球の人たちに甘えるなんてことをして、果たして許されるのだろうか…?

「レナさん…?」

そんな私の様子に気づいたのか、ソフィアが心配げにそう声を掛けてきた。私は、ソフィアの顔を見やって、もう一度PDAに目線を落とした。

私は、勝手だ。ううん、勝手でも良い。

アヤ…ごめんね、私、テオを助けてあげたい…!
 


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