4: ◆8HmEy52dzA[saga]
2015/01/16(金) 20:16:43.75 ID:6UJ3zAla0
「……おい、聞いてんのか暦。アンタの趣味で集まったんならオレはいち抜けるぞ」
「何を言うんだ結城。確かに素晴らしい面子だが僕は仕事に私情を挟むなんてことはしないし、相手が誰でも嬉しいぞ」
これは紛うことなき本音だ。
確かに嬉しいことに変わりはないが、僕は世間で忌避されつつある少女しか愛せない罪深き英雄ではない。
何よりまだそこまでの徳は積んでいない。
僕がそんな愛の伝道師を名乗るなんておこがましいにも程があるじゃないか。
「まあ、疑っても仕方がありませんわ。プロデューサーも大人ですから、そんなお間抜けな理由で私達を選んだりはしないでしょう」
ここはひとつ、プロデューサーのお眼鏡に適ったと前向きに考えましょう、と櫻井。
僕としては非常に嬉しい一言だが、言い方に少々棘があるのは櫻井なりのご愛嬌だ。
「何だよその桃華の信頼は……まぁ、オレもそこまでグチグチ言うつもりはねえけどよ」
「わたくしはプロデューサーをそれなりに信頼してましてよ?」
「ま、いいか……お前はどうなんだ、ありす」
「橘、と呼んでください」
「なんでだよ、いいじゃねーかありすで」
「橘、です」
「あーりーすー」
「た、ち、ば、な、です」
「お、お二人とも……」
いかん、これはいかんぞ。アイドル同士の仲が険悪だなんてそんな悲しいことはやめてくれ。
ここは僕が身を挺して防ぐ他ない!
「うおおおおおおおおお!」
「っ!?」
突然奇声をあげる僕。当然ながら、不穏な空気など何処へやらで皆の視線が僕に集まった。
「ぷ、プロデューサー、急にどうしたんですの!?」
「大好きだお前ら! 僕と結婚を前提としない清いお付き合いをしてください!」
両腕を広げて一番近くにいた橘にハグしようと試みる。
丁度いい、この際だ。
大人の恐ろしさを橘の身に思い知らせてやる!
具体的には尻や胸を撫で回すという形でな!
「きゃああああああぁぁぁぁぁぁ!?」
「このっ……変態野郎ッ!」
「はぐぉっ!?」
果たして僕の両腕が橘を覆い尽くすその前に、結城のサッカーで鍛えた黄金の左脚がめり込んだ。
チンだった。
直撃だ。
「ふっ……」
ニヒルな笑みを浮かべつつその場に崩れ落ち、僕は気を失った。
薄れゆく意識の中、三人の声が葬送曲のように耳朶を打つ。
「なんて幸せそうな死に顔なんですの……」
「……はぁ。どうしましょう、これ」
「自業自得だろ、どう見ても」
悔いはない。
僕は、この身を犠牲にしてでも、無為な争いを止めることが出来たのだから。
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