1:名無しNIPPER[saga]
2015/01/21(水) 00:11:33.72 ID:URlKmTQl0
満開の花畑の中。
夕焼けで赤くなり始めた空は、笑顔のその子を明るく暖かく照らしていた。
舞い散る花びらの中、私たちは手を重ね合わせる。
「あなた、とってもかわいいわ」
「きみのほうが」
「ねえ、しってる? かわいいこには、キスをするものなのよ」
「そうなの?」
「そう……めをとじて」
意味もわからぬままに、勢いで押されるがままに、
私は、唇を……
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2:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:12:31.79 ID:URlKmTQl0
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――
――――
――――――
3:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:13:05.75 ID:URlKmTQl0
〜
「それじゃ、行ってくるね」
「ねーちゃんどこいくの?」
4:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:13:47.17 ID:URlKmTQl0
「あっ、ちょっと待って!? これ今から植えるお花、ナデシコの花なのよ!」
「えっ」
「ちょっと皆聴いて〜! これナデシコ今から植えるってとこに来てくれたわよ、撫子ちゃんが!」
5:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:14:46.33 ID:URlKmTQl0
「ふぅ…………」
小走りのペースを落として、また自然に歩き出す。息が切れてたり、さっきの気恥ずかしさで赤面が残っていたら嫌だなと思いながら、大きく息をついた。
6:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:15:13.21 ID:URlKmTQl0
あの相手は誰だったのだろう。今でも知っている人なのだろうか。ぱっと思いあたる節にその候補はいなかった。
幼稚園か……小学校低学年の頃だったと思う。だとすればその時の同級生か?
ひとつだけ確かなのは、その相手はとてつもなく可愛かったということだけだ。
7:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:15:44.38 ID:URlKmTQl0
〜
「あれっ、誰も来てない……」
若干遅れちゃったかなと思いつつも、どうやら一番乗りは私だったらしい。
8:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:16:53.37 ID:URlKmTQl0
「急でごめんね、今朝のことみたいで……そんなに遠くない親戚の方なのよ。私も今日の準備してたらいきなり知らされて……」
「ほ、ほんとに? じゃあ藍今日はだめか……」
「ごめんね、本当にごめん! また後でお詫びするから……」
9:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:17:50.34 ID:URlKmTQl0
そうなると三人か……いつも藍がいるから、あの二人の暴走を止めるのは私しかいなくなるなぁと思っていると、よりかかる柱の後ろの方から大きな声が聞こえた。
「それはめぐみが悪いんじゃないの!」
10:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:18:20.29 ID:URlKmTQl0
「バイト明日だと思ってたら、今日だったって……この前シフト代わってもらったりしたからどうすることもできないし、今日行けなくなっちゃったーって」
「えー……それはめぐみが悪いね」
「本当よねえ。しかも撫子に怒られるのが怖いからって私に電話して来たのよ? 代わろうとしたら切っちゃうし」
11:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:18:55.22 ID:URlKmTQl0
美穂と二人きりで何かをすることは珍しかった。大抵周りに誰かしらがいるのだ。
たまたま行った出先で美穂と出くわすことなどはよくあるが……意識して二人で何かをしたことは、あまりない。
12:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:20:01.12 ID:URlKmTQl0
別に普段が優しくないわけではないのだが、明らかに……落ち着いた子になる。こんな感じだったっけと気づいたのは最近だが、悪いことをしているわけでもなし、まだ誰にも言っていない。
私は過去に、自分なりの答えを出した。
13:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:20:34.02 ID:URlKmTQl0
「……撫子?」
「えっ、ああ、何?」
「もう、だから撫子のやりたいことを聞いてるの。今日はどうせ二人なんだし」
14:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:21:38.36 ID:URlKmTQl0
美穂は自分を変えて、他人に尽くす子だ。
だとしたら、 “本当の美穂” とは一体どれなのだろう?
隠している本当の自分……美穂自身の欲求を出してあげたいと思った。
15:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:22:23.52 ID:URlKmTQl0
〜
「あっ、撫子急いで! もうバス来てるわ」
「え、バス乗るの?」
16:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:23:13.57 ID:URlKmTQl0
そうして暖かいバスに揺られながら一人で考えを巡らせていると……気づかないうちに私は寝てしまっていた。
優しく揺り起こされた時には、そこはもう目的地だった。
17:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:25:03.70 ID:URlKmTQl0
〜
「意外だよ。美穂ってもっとショッピングとか、カフェ派だと思ってたから」
「今日はちょっと特別なの。そこで座って待ってて? 私、飲み物買ってくるから」
18:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:25:56.94 ID:URlKmTQl0
雲ひとつない快晴。と思いきや遠くの空に小さい雲はあったが、文句無しの晴れ渡った空だ。
陽は穏やかで、暑すぎるわけでもなく、そよ風と相まって非常に心地よさをもたらしている。客たちの喧騒が無ければ、私はまた眠ってしまいかねない。
19:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:26:35.56 ID:URlKmTQl0
私ね、小さい頃は、とても無口な子だったの。
無口で、いつもむすっとしてた。何に対しても興味が持てなくて、それはそれは可愛気の無い子だったと思うわ。もちろん外見はパーフェクトだったけどね?
20:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:27:27.46 ID:vs7NK8Ovo
物語かと思ってスルーするとこだぅた
21:名無しNIPPER[sage]
2015/01/21(水) 00:27:32.50 ID:URlKmTQl0
あれは……今から10年以上も前だったかしら。私は両親に、親戚の家族に何日か預けられたの。いとこと一緒に、遊びに連れて行ってもらいなさいって。
でもそれが、ただの厄介払いだってこともわかってた。ひねくれものの私に疲れた両親が、私を置いて二人で旅行に行ってたみたい。別に連れて行って欲しいとも思わなかったけど、心の底がムカムカしたのは何故なのかしらね。
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