過去ログ - 恭子「いつか聞きたいその2文字」
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17: ◆aaEefGZMoI[saga]
2015/01/22(木) 20:34:02.48 ID:DsjzTcAto
「でもな、恭子」
大仕事をやり遂げて一息ついた私に、洋榎が言う。
「ん?」
「恭子はうちのことが好きかもしれんけど……
うちにとっては恭子はまだただの友達やねん。
せやから──」
「うん」
「うちを恭子のモンにしてほしい」
そう、この恋はあくまでまだ私の片思いであり、洋榎にとってみれば私はただの友人。
次なるミッションは、その堀を埋めること──
「じゃ、じゃあ、明日土曜やし、どっかデートにでも行かへんか」
「お、ええな」
「どこ行こうか」
「まあそれは恭子の好きなところに連れて行ってくれればええわ」
「ん……じゃあ考えとく」
「よろしゅうなー」
「それからさ、毎晩メール交換もせえへん?
うちから送るから」
「メールかあ。うちは電話の方がええなあ」
「あー、じゃあ電話にするわ」
「おう。電話やったらうちからでも掛けるで」
「夜は基本大丈夫?」
「大丈夫大丈夫、いつでもオッケーや」
話で盛り上がるうちに、気づけば時計の針は天辺を過ぎ、1時を指していた。
部屋の明かりが消え、横になると、窓の縁から零れる微かな月光に輪郭を照らされた身体がすぐ目の前に横たわっている。
その輪郭を遮るように腰にそっと腕を伸ばすと、布伝いに彼女の体温がじわりと広がってきた。
そのままもう一方の腕を反対側の腰に伸ばし、抱きまくらよろしくその身体を抱き締める。
眠っている彼女は何も言わない。
抑えきれない胸の高鳴りと疲れが支配し、まるで止まっているかのような時間の中、私は彼女に顔を近づけ、静かに口づける。
そして時が進むのを惜しむように目を閉じた。
閉じた目の奥に、彼女の顔と目元と唇が無数に浮かんでは消えていく。
暗闇の中を反射して響く声は、聞き取れないが、愛しい人のそれそのものである。
いつの日かそれが、完全に自分のものになる未来が来ることを願って。
いつか、聞いてみたい。
その口からこぼれ出る、『好き』の2文字を。
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