1:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:05:23.89 ID:n7hJWg0e0
短い季節外れのモバマスss
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2:名無しNIPPER
2015/01/25(日) 23:06:55.64 ID:n7hJWg0e0
  5月のある日、佐久間まゆはいつも通り自分のプロデューサーさんにデートのお誘いをしました。 
  
 いつもは困り顔で受け流すプロデューサーさんも初夏の陽気に当てられたか「よし、来週の日曜日はオフが重なるしサイクリングにでも行こうか」と言いました。 
  
 まゆは大層喜びました。しかしまゆは自転車に乗れなかったのです。 
3:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:08:39.28 ID:n7hJWg0e0
 困りました。正直に言えば優しいプロデューサーさんのこと、きっと普通のデートをしてくれるでしょう。 
  
 しかし些細なことでも愛しい彼を失望させては女が廃ります。 
  
 頭の中ではすでに川沿いの堤防を2人笑いあいながら走るビジョンが移されています。 
4:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:11:41.63 ID:n7hJWg0e0
 まずは用具の購入。これは問題ありませんでした。 
  
 同じ事務所の北川真尋や斉藤洋子が手伝ってくれました。 
  
 買ったのは新品のママチャリにいくつかの用具。 
5:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:13:45.24 ID:n7hJWg0e0
 次に練習場所。これが問題でした。 
  
 彼女たちはアイドルです。露出の高い衣装を着ることも多いのです。転んで傷を負ってしまうとプロデューサーさんに怒られてしまいます。 
  
 せっかく彼と思い出を作るための練習なのに、それで怒られていては面白くありません。 
6:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:16:43.96 ID:n7hJWg0e0
 練習初日。約束の日までに練習できるのは今日を入れてもう5日しかありません。 
  
 幸い、この期間はお仕事があまり立て込んでおらず、それなりの時間を練習に割くことができます。 
  
 それでも余裕が無いことには変わりありません。 
7:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:18:15.42 ID:n7hJWg0e0
  その夜の寮の個室。半べそになりながら絆創膏を膝に貼るまゆがいました。 
  
 最初に踏み込みが足りず転んだのを皮切りに起きあがっては転び、起きあがっては転びを繰り返し、結局この日は少しも進むことはできませんでした。 
  
 怪我には帰ってきたから気づきました。 
8:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:20:41.26 ID:n7hJWg0e0
 幸い傷はあまり大きくありません。 
  
 3日ほどでかさぶたになり、痕も残らず消えてしまうでしょう。 
  
 その間撮影なども無いのでその点は心配ありません。 
9:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:22:48.65 ID:n7hJWg0e0
 翌日。練習場所の公園にはまゆの他にもう2人のアイドルがいました。 
  
 まゆが応援に呼んだ輿水幸子と星輝子です。2人まゆは以前にユニットを組んでから親交がありました。 
  
 幸子はボクがいれば100人力ですと胸を張り、輝子は暇だったところをトモダチに呼んでもらえたので嬉しそうにしています。 
10:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:24:20.93 ID:n7hJWg0e0
 幸子はまゆのまたがった自転車のサドルの後部を掴み、まゆにこぐように促しました。 
  
 「ボクが押さえますから大丈夫です!」 
  
 輝子は木陰の茸をつついています。 
11:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:25:46.96 ID:n7hJWg0e0
 仕切り直しです。鼻の頭にバッテンの絆創膏を貼った幸子が自転車の左手後方。輝子が右手後方に立ち、サドルを押さえました。 
  
 動きづらいですが、二人は過去にも何度かユニットを組んでいるので息はピッタリです。 
  
 歩くようなスピードでゆっくり自転車を押します。それでもまゆはハンドルにしがみつくのがやっとです。 
12:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:27:58.40 ID:n7hJWg0e0
  まゆの手の震えはハンドルを伝い、自転車右に左に、蛇行させます。 
  
 見かねた幸子は後輪に巻き込まれないように体を寄せながらまゆに叫びかけます。 
  
 「まゆさん!怖がらないでペダルをちゃんと踏んでください!転ばないように押さえてあげますから!」 
13:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:30:12.14 ID:n7hJWg0e0
 数秒後、幸子と輝子は団子のように重なって、数メートル先で転がる自転車とまゆを呆然と見ていました。 
  
 まゆの乗った自転車がいきなり速度を増したので、2人ともバランスを崩し倒れてしまったのです。 
  
 しかし、まゆの乗った自転車は2人の助けがなくとも数メートル進みました。 
14:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:32:06.06 ID:n7hJWg0e0
 幸子の声に押され、勇気を出してペダルを踏む。それがきっかけでした。 
  
 それがわずかな進歩をもたらしたのです。 
  
 調子に乗ってボクの教えが良かったんですとうそぶく幸子。 
15:名無しNIPPER[sage]
2015/01/25(日) 23:33:06.94 ID:8ZlJgU6eo
 期待 
16:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:34:15.28 ID:n7hJWg0e0
 まゆはやればできる子です。 
  
 1度コツをつかんだことはなんでもそつなくこなして見せます。 
  
 自転車に乗れなかったのは運動神経に自信を持てず、挑戦していなかったからというだけなのです。 
17:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:36:12.07 ID:n7hJWg0e0
  「まゆさん!だいぶ乗れるようになってきましたね!」 
  
 「うん…すごい…」 
  
 公園の1/4ほどの一区画を一周するという挑戦を、おぼつかないハンドルさばきで、所々足をつきながらも終えてみせたまゆを2人がねぎらいます。 
18:名無しNIPPER[sage]
2015/01/25(日) 23:38:34.17 ID:6FznMjOro
 何だこのまゆいつもよりずっとかわいい 
19:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:38:45.27 ID:n7hJWg0e0
  そうです、まだたりないのです。 
  
 まゆの目標は週末までにサイクリングに出かけられるくらいになること。 
  
 日が暮れるまでプロデューサーさんと2人だけで景色を見て回り、どこかの人の少ない広い野原で汗をぬぐいながら愛しい人と夕焼けをバックにキスをすることなのです。 
20:名無しNIPPER[sage]
2015/01/25(日) 23:39:18.55 ID:kcGZTsW3o
 圧倒的ほのぼの感 
21:名無しNIPPER[saga]
2015/01/25(日) 23:40:22.48 ID:n7hJWg0e0
 日が長くなってきていたせいか、練習に夢中だったせいか。 
  
 しっかり者のまゆも寮の18歳未満の門限がとっくに過ぎていたことに気づいていませんでした。 
  
 3人は仲良く寮長兼任の高橋礼子のお説教を受けることになりました。 
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