8:魔法をかけて
2015/02/04(水) 16:05:10.72 ID:GUuysaGD0
美希「ねえ、千早さん、ハニーは元気?」
その瞬間、目の前の彼女から笑顔が消えた。その表情を私は知っていた。まだ千早さんが765プロへ入りたてだった頃、私は事務所で亜美と小鳥と家族の話をしていた。その時たまたま千早さんがお仕事から帰ってきて亜美が唐突に質問した。「千早おねーちゃんは兄妹とかいるの?」一瞬にして空気は凍り、事務所が静寂に支配された。小鳥が静寂を壊すまで彼女は亜美をじっと睨んだままだった。その目は鋭く、言葉を使わずに意思を伝えるには十分なものだった。まさしくそれは「殺意」がこもっていた。その目を私は今向けられていた。
彼女は注文したコーヒーのカップを手にとり口へ運ぶ。その間も目はこちらを睨んだままだった。私は蛇に睨まれた蛙のように微動だに出来づ、固唾を呑むばかりだった。
コーヒーカップが元の位置に置かれ無機質な音が鳴り、それを合図と言わんばかりに彼女の口が開いた。
千早「誰のことかしら?」
美希「……え、ハニーはハニーだよ!プロデューサーのこと」
あまりの返答に私は驚く。千早さんは何を言っているの?
私の声は先ほどの緊張のためか震えていた。
千早「あぁ、彼のことね」
彼?どうして千早さんがハニーのことをそんな言い方するの?頭の理解はもはや追いついてはいなかった。しかし、それに追い打ちをかけるように彼女の言葉が続いた。
千早「彼のことはもう美希には関係ないんじゃないかしら?あなたには新しいプロデューサーがいるでしょ?」
確かに961プロには765プロとは比べることは出来ないほど設備は備わっている。アイドルの頂点を目指すには十分すぎる場所である。しかし、プロ意識が高いためなのか765プロのように仲間との絆など皆無に等しかった。よく噂されるアイドル同士の潰し合いや派閥問題なども当たり前のようにあった。仲間を蹴落としてでも前に進む、それが961プロのやり方だった。ユニットを組んでいたフェアリーのメンバーですらフェスのとき以外、意思疎通などはなかった。それが辛いわけではない。それがプロなんだと言い聞かせていたが、961プロにいて初めて私は765プロの大切さに気づいた。しかし、千早さんの言葉は私をそれから突き放すかのようだった。
美希「それとこれとは話が別なの!!どうしてそんな意地悪するの?千早さんらしくないって思うな」
いや違う、これは彼女らしい行動なんだろう。私がただ忘れていたのだ。如月千早の本性を…
千早「別に意地悪しているつもりはないわ。ただ事実を言っただけよ。だって、あなたは−」
やめて!!聞きたくないの
千早「もう、765プロの仲間ではないのだから」
バンッ!!
静かな店内の静寂を私が叩き壊した。気づいた時には私は手を力いっぱいテーブルに振り下ろしていた。
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