過去ログ - 唯「ピンク・ビック・バスタオルを買いに」
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10:名無しNIPPER[sage saga]
2015/02/07(土) 19:23:25.89 ID:HzA0YEX8o

8

唯先輩は、ってあずにゃんは言う。
ある日ある時あずにゃんはそんなふうに言う。
唯先輩はわたしがほんとうに空を飛んでるって信じてるんですか。
え!飛んでないの?
はあ、ってあずにゃんは言った。
はあ、ってあずにゃんはよく口にするけど、そう言われるとなんて返せばいいのかよくわからないので、
でもとにかくなにか言わなきゃだし、うーんってわたしはいつも言った。
はあ。
うーん。
むむむ。
うーん。
唯先輩はわたしがほんとうに、ほんとうに、空を飛んでるって信じてるんですか?
そうだよ。
見たわけでもないのに?根拠もないのに?
でも、じゃあなにをしてるのかなあって、なにしてるの?
なんでも考えられるじゃないですか。
むむむ……あ!ほんとうは空を飛ぶのがあんまりうまくなくて飛んでるとは言えないとか、それは滑空って言うんだよ、あずにゃん。滑空。
はあ。
うーん。
だから、たとえば、ほんとはいけないことをしてるとか。
いけないこと。
誰か他の人にこっそり会ってるとか、泥棒をしてるとか、唯先輩に言えないことでお金を稼いでるとか、人を殺してまわってるとか。
え!してるの!?
はあ。
うーん。
はあ、だから、わたしが言いたいのはなんで唯先輩がわたしのことを信じてるかってことですよ。
うーん……えと、うーん。
それやめてくれませんか。
どれ?
その、なんていうか、うなる、みたいの。腹立ちます。
うーん、そう言われてもなあ。うーん。
むむむむ。
でもね、わたしが思うのはさ、あずにゃんが空を飛ぶって言うならさ、わたし、ピンク・ビック・バスタオル買わなきゃってそれだけだよ、それだけ。
はあ。
またため息。
でも、ほんとうは、あずにゃんが空を飛ぶのを信じる理由はもう少しある。
わたし、昔、空を飛ぶ人を見たことがあるのだ。
中学生の頃、塾からの帰り道、夜が遅くて暗かった。
点々と灯る街灯ごしに空を見上げると、まんまる大きなお月さまが見えて、きれいだなあって思っていたら、なにか黒いものがゆるやかに横切った。
それは、たぶん、人だったと思う。
どんなふうに飛んでいたか、というところまでは忘れてしまった。
なにしろとっても怖かったのだ。
走って家まで帰った。
もちろんそんな話を誰かに言ったって笑われるだけだし、そうじゃなくても見間違えに決まってるっていわれるにちがいない。
だからそんなことは黙っている。
あずにゃんにだって言わない。いちばん言わない。
夜の空、あずにゃんは飛んでいて、わたしは知っている。
ピンク・ビック・バスタオルを買わなきゃって思う。
わたしは言った。
じゃあさ、じゃあ、あずにゃんはピンク・ビック・バスタオルがあるって信じてる?
信じてるわけないじゃないですか、唯先輩ってばかなんじゃないですか。
うーん。
たしかにあずにゃんの言うとおり、わたしはちょっとばかなのかもしれない。



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