4: ◆ejIZLl01yY[saga]
2015/02/14(土) 19:12:02.87 ID:VWsC76OM0
ザプッ…ザプッ…
「はぁ、はぁ」
少女の手が壁に当たる。
その瞬間、ストップウォッチをみた女性が顔をしかめる。
「大丈夫?…無茶をしないで、華。」
華はプールサイドに腰を掛け、息を整える。
「いえ、私はまだいけます。コーチ、もう一度お願いします。」
時計の針は既に7時を指していた。
他の生徒は6時にはレッスンを終わりにし、それぞれ帰宅する。
「コーチ…私のタイム、半年前より…おちてますよね。」
コーチの目がたじろぐ。
非常に言い難そうだ。
おちていることなんて分かっている。
だけど、聞かずにはいられない。
僅かな可能性にかけているのだ。
半年前に、足を折った。
学校からの帰り道、自転車で坂を上っていた。
坂を上りきり、曲がろうとしたとき
…車にぶつかった。
私の左足は車と自転車に挟まれ、骨が限界を超えたのだ。
足が熱い。痛さなんて言葉にできない。
まるで熱々の鉄板を押し付けられたようだった。
あれから半年、現在。
私は漸く水泳ができるようになった。
でも、この痛みはまだ残っているし
何より、身体が鈍っている。
ああ、早く取り戻したい。
あの頃は私の泳ぎに敵う者なんていなかった。
今は次々と抜かされ、嘲笑う奴もいる。
悔しい。悔しいなんてもんじゃない。
憎い。この痛みが。嘲笑う奴ら。
全部、憎い。
ガチャン!!
施設のドアを閉める。
この施設には約10年通っている。
それなのに…。
「やあ、どうやら困っているようだね。」
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