過去ログ - 「お前はドライブが嫌いだったよな」
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34: ◆nlCx7YJs2Q[saga]
2015/02/20(金) 00:22:57.88 ID:OHZk4XxVo


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 山頂に構えられた斎場はほかに類を見ない造りであり、大きいくせに屋根は低く、暗い色調で何か寺であるかのようなに錯覚した。


 あちこちに不自然なまでに大きな駐車場と、そこにいいたるまでの道、奇妙なまでに手入れされた植え込みとで合わさり、同じ世界にあって尚、異界であるように思えた。


 当然ながら山頂であるゆえに人気も無い。
やかましい車のクラクションや人のざわめきなど全く聴こえず、ただ風に煽られる木々のざわめきが、やけに空の近い空間に満ちていた。
うるさいくらいに静かだった。


 事前に連絡していた職員の名前を伝えると職員が速やかに応接する。
 金銭関係、彼女が入っている箱の材質、骨の持ち帰りの有無、そして残った骨の処置。
 何故か車のナンバーも聞かれた。それらはつつがなく、簡潔且つ丁寧に進められ、半ば抜け殻になった俺でも問題なかった。


 彼らの俺を見る眼差しはこの異界にあって普段の社会で見ることの無いものだった。

 決して世にある悪質な公務員像的な事務的な態度でもなく、ましてや軽薄な同情でもない。
干渉しすぎることも無く、かといって無関心なわけでもない。ただただ、彼らの中では線引きが出来ているのであろう。
彼らの他にそのような眼差しをする人々を俺はコレまで見たことが無かった。そこには確かな心遣いを感じた。





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