過去ログ - 憂「猫ドーナツ事件」 -SS速報VIP

過去ログ - 憂「猫ドーナツ事件」

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1:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:40:27.36 ID:Y6LNkdOgo
１

世界でいちばん大事なもの、それはなんといってもゆっくりくつろいでお茶をするためのあったかいコタツです。
もちろんあなたのおうちにもあるでしょう。
私の家にもあります。
「地球の裏にもある？」
もちろんあるよ、お姉ちゃん。

コタツは家族です。
ぬくもりです。
優しさです。
人間はできるなら、常に自分のコタツを中心に生活すべきだというのが私の幼いころの持論でした。
そういうわけで、私のこじんまりとしたこの探偵事務所にも、もちろんコタツはあるのです。
ああ、いい気持ち。

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2:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:41:07.86 ID:Y6LNkdOgo
２

平沢憂探偵事務所についてお話しましょう。
緑色のドアを開いてすぐ部屋の真ん中にいるのは、もちろん愛しのコタツです。
正方四辺形のスタンダードでクラシックな家具調コタツ。

3:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:41:59.87 ID:Y6LNkdOgo
３

カランコロンコロン。
私と純ちゃんがコタツでうとうとしていると、事務所のドアが鈴の音を鳴らして開きました。
「いらっしゃいませ」

4:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:43:22.39 ID:Y6LNkdOgo
４

「実は憂にドーナツを取り返してほしいんだよ」
「ドーナツ？どこどこ？」
居眠りしていた純ちゃんが目を覚ましました。

5:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:43:55.20 ID:Y6LNkdOgo
５

「これはさしずめ猫ドーナツ事件だね」
と純ちゃんが言いました。
そういうわけでこの事件はそれ以後「猫ドーナツ事件」と呼ばれることになりました。

6:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:44:31.49 ID:Y6LNkdOgo
６

３６５日ぶりの事件に、私と純ちゃんは張り切って事務所を飛び出しました。
私と純ちゃんは勢い込んで猫さんを探します。
あれあれ、だけど猫さんはどこにいるのでしょう？

7:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:45:04.03 ID:Y6LNkdOgo
「ドーナツ、もう食べられちゃったかな」
助手の純ちゃんは不安そうな顔です。
私も不安です。
お姉ちゃんの依頼を解決できなかったら、お姉ちゃんきっととっても悲しんじゃうよね。
「なにか手がかりがないか、お姉ちゃんに聞いてみるね」

8:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:45:34.90 ID:Y6LNkdOgo
７

「猫さんの電話番号？」
猫さんの電話番号だって？
そして私はお姉ちゃんから猫さんの電話番号を教えてもらいました。

9:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:46:17.09 ID:Y6LNkdOgo
８

ぷるるるる。ぷるるるる。
まさか猫さんが電話を持っているなんて、思ってもみなかったことを後悔しつつ、私はお姉ちゃんに教わった電話番号に電話をかけてみました。
がちゃり。

10:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:46:46.46 ID:Y6LNkdOgo

塀の向こう側から、電話の着信音が聞こえていました。
おやおや。

11:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:48:18.49 ID:Y6LNkdOgo
９

塀の向こう側に回りこむと、そこには黒猫さんがいました。
猫さんは真っ黒で長い髪を頭の横でしばった、女の子の猫さんでした。
「もう逃さないよ」と私。

12:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:48:47.46 ID:Y6LNkdOgo
１０

「憂こわい」と純ちゃんが言いました。
「こわい」とツインテールの猫さんが言いました。
こわくありません。

13:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:49:22.15 ID:Y6LNkdOgo
１１

私と純ちゃんは、黒猫さんを連れて探偵事務所へと帰って行きました。
意気揚々たる足取りというわけには行きません。
なにしろ、ドーナツを取り返すというお姉ちゃんからの依頼を、４分の３しかかなえることができなかったのですから。

14:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:49:58.72 ID:Y6LNkdOgo
１２

「憂、お誕生日おめでとう！」とお姉ちゃんが言います。
「おめでとう」と純ちゃんも言いました。
「にゃあ」と猫さんが不思議そうに言いました。

15:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:50:39.25 ID:Y6LNkdOgo
１３

「だからもし憂が猫さんにドーナツをあげたいなら、そうするといいよ」とお姉ちゃん。
「どうするの、憂？」
もちろん決まっています。

16:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:51:42.30 ID:Y6LNkdOgo
１４

私たちは４個のドーナツをめいめい１個ずつ受け取って、コタツに着席しました。
お誕生日、およびお誕生日ではない日パーティーです。

17:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:52:51.21 ID:Y6LNkdOgo
１５

私たちはドーナツを食べ、お茶を飲みました。
「お姉ちゃん、このドーナツとってもおいしいよ」
「憂がよろこんでくれてうれしいよぉ」

18:名無しNIPPER[saga]
2015/02/22(日) 21:53:25.49 ID:Y6LNkdOgo
１６

こうして猫ドーナツ事件は幕を閉じました。
そういうわけで、それから私たちの事務所には猫の梓ちゃんが遊びに来てくれるようになったのです。
もちろんお姉ちゃんも来てくれます。

19:名無しNIPPER
2015/02/22(日) 23:01:05.29 ID:z4WhwbkTo
憂ちゃんの誕生日今日だったな。

20:名無しNIPPER[sage]
2015/02/22(日) 23:51:54.31 ID:QlSaMV81o
乙

21:名無しNIPPER
2015/02/23(月) 08:51:28.43 ID:zI9ArayAO
乙

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