63: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:22:31.96 ID:kKUfzB5A0
 母の事を連想させるような、ありふれた苗字ではなく、 
  
 私自身の名前を、呼んで欲しかった。 
  
 「いいのか?」 
  
 「はい」 
  
 「……ありす」 
  
 「……はい」 
  
 心地よさと気恥ずかしさが胸を埋めていく。 
  
 でも、不思議と嫌な気持ちはしなかった。 
  
 「橘さーん!出番でーす!」 
  
 廊下からスタッフさんの声が聞こえてくる。 
  
 これが私の初めてのステージ。 
  
 「よし、行ってこい……ありす!」 
  
 「……はい、Pさん!」 
  
 私はアリスじゃなくて、ありすだから。 
  
 不思議の国も、鏡の国にも、もう迷い込む事はない。 
  
 だって私の傍にはいつも―――王子様が、いてくれるから。 
  
  
  
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