49: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 14:54:06.42 ID:kKUfzB5A0
「まだ、アイドルになりたいと思っているのか?」と。
私は毎日「はい。あの人と一緒に」と答えるだけ。
ただ、今日に限ってはそうはいかないかもしれない。あの人を疑い始めた、今日に限っては。
50: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 14:55:49.60 ID:kKUfzB5A0
考えてみてもわからない。私はそこまでアイドルやあの人に固執していただろうか。
疑っても尚、信じたいと思っているのか。
「……そうか。わかった」
51: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 14:58:33.73 ID:kKUfzB5A0
強く言ったつもりが、声が震えている。
なんと情けない。
「母さんに……君がアイドルになりたがっていると、言いに行く」
52: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:00:11.96 ID:kKUfzB5A0
「ありすがアイドルをやるという話……最初は真に受けなかった。すぐにお帰りいただいた」
「……当たり前、ですよね」
「だけどその日から毎日彼は私のところにやってきては、言うんだ。『彼女をアイドルにしたい』と」
53: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:02:09.94 ID:kKUfzB5A0
「君は……もしこの生活を失くしても……もしこれから先、困難が待っていても……アイドルに、なりたいと思うかい?」
54: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:10:54.70 ID:kKUfzB5A0
20○△年 E月I日
「よ、久しぶり。橘さん」
55: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:13:02.78 ID:kKUfzB5A0
ありす イン ワンダーランド。
ううん。
ありす アンド P イン ワンダーランド。
56: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:14:25.07 ID:kKUfzB5A0
「それもあります。あの人が、あそこまで母に言うなんて思ってませんでした」
「橘さんの親だからな。もしかしたら橘さんが饒舌なのも、父親譲りかもしれないぞ?」
57: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:16:10.87 ID:kKUfzB5A0
首を撥ねられたジャバウォックはうめき声をあげた後、静かに椅子に沈みこんだ。
「……すぐには決められない。少し話をしましょう」
掠れた声で彼女は言葉を搾り出した。
58: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:17:06.83 ID:kKUfzB5A0
「……お父さん」
「やっと……そう、呼んでくれたね」
反射的に口から出てしまった言葉を、父ははっきり聞いていたようで。
59: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:18:41.27 ID:kKUfzB5A0
そう。
そもそもあの説得は、私がアイドルになりたがっていないと成立しない説得だったはず。
ただ「嫌ではない」と言ったぐらいで、そこまで私を信じられるものなのか?
60: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:19:49.58 ID:kKUfzB5A0
「な、何かくさい事言ったな俺。忘れてくれ」
照れ隠しにそっぽを向く彼が何だか微笑ましい。
「いいえ、忘れません」
61: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:20:44.04 ID:kKUfzB5A0
20○△年 F月L日
これは、エピローグ。
62: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:21:56.78 ID:kKUfzB5A0
ライブの流れの書類の最終チェックを行っていたPさんがこちらを向く。
この際だから、私は最初から気になっていた事を尋ねてみる事にした。
「どうして、下の名前で呼んでくれないんですか?」
63: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:22:31.96 ID:kKUfzB5A0
母の事を連想させるような、ありふれた苗字ではなく、
私自身の名前を、呼んで欲しかった。
「いいのか?」
64: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:23:44.58 ID:kKUfzB5A0
20☆□年 7月31日
これは御伽噺の後のお話。
65: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:24:52.38 ID:kKUfzB5A0
「……そうだったな。ありす」
「そうですよ、Pさん。そもそも『待てますか?』って聞いたのは私なんですから」
「それで実際待った俺も俺なんだけどな」
66: ◆uCbLPg/WnY[saga]
2015/02/23(月) 15:26:05.43 ID:kKUfzB5A0
これにて、本当の終幕。
本当のありすママは、ありすがアイドルになる事をはしゃいで喜んじゃうくらい可愛い人ですヨ
では、ありがとうございました。
67:名無しNIPPER[sage]
2015/02/23(月) 15:30:15.90 ID:klB/y14bo
乙
68:名無しNIPPER[sage]
2015/02/24(火) 00:08:16.91 ID:g5B3mDfpo
ありすの環境はここまで酷いものではないと思うが、良かった。
69:名無しNIPPER[sage]
2015/02/24(火) 22:10:41.56 ID:381K9atbO
乙乙
綺麗に終わってよかった
やっぱりハッピーエンドはいいよね
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