11: ◆8HmEy52dzA[saga]
2015/02/25(水) 20:51:37.59 ID:DLa1I0Qh0
004
生理的に受け付けない音と共に、ノイズが走る。やがてノイズが収まり拓けた視界に映るのは、見慣れた事務所内の風景。
ただ一ついつもと違うのは、机の上に立つ一人の女性の姿。
おかっぱ頭の似合う凛としたスタイル抜群の彼女の名前を、私は知っている。
彼女の名前は影縫余弦。
不死身の怪異の専門家。
「のう、いつまでもいちびっとったらあかんで、宿借のお姉やん」
「…………」
「うちと何度も会うとるやろ?」
まただ。
また、影縫さんは現れた。
膨大なデータは蓄積する。
今日一日に限定して『やり直し』が可能な今の私には、彼女と斧乃木余接ちゃんとの邂逅が、それこそ膨大な量のデータとなって記憶というドライブに保存されている。
来るのは、大抵どちらか一方。
たまに二人で一緒に来る。
レアなケースとして、変な髪形をした喪服の人と一緒に来たこともある。
「水谷……!」
「鬼畜なお兄やん、今回は義理もあれへんし、譲らへんで」
阿良々木さんが歯軋りをしながら、対峙する私と影縫さんを忙しなく交互に見比べていた。
「うちはそこなお姉やんを殺しに来たんや」
「影縫さん……知り合いの馴染みで、せめて話だけでも聞いてくれませんか」
影縫余弦と斧乃木余接は、私を殺しにやってくる。
目的は、今までの口振りからして、そうすることが仕事のようだ。
人間ではなく、今の私のような、異能の存在を消す仕事。
だからだろうか、不思議なことに何度も殺されているというのにあまり憎しみは湧いてこなかった。
「あかんあかん。うちが出張っとるんや。余接も動いとる。そんだけ言えばわかるやろ、鬼畜なお兄やん」
「……水谷……」
頼むから何か言ってくれ、と阿良々木さんが哀願していた。
ここで阿良々木さんに嘘をつくこと自体は簡単。
けれど、それでは意味がない。
それでは、わたしの目標に届かない。
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