1:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:14:57.91 ID:eIfs/RqE0
「すっかり遅くなったな」
一向に進む気配のない渋滞に辟易としながら、俺は助手席に身を預ける藤原肇にそう投げかける。
「………え? あ、はい。そうですね…」
肇は一間を置いて、ただ反射的にそう答えた。
疲れているのだろう。声色からだけではない、シートに完全に体重を預け、凭れ掛る姿からもそれが容易に見て取れる。
「日のあるうちには帰れる予定だったんだけど… 俺のミスだ。ごめんな」
「いえ… あの監督さん、撮影が長引く事で有名ですから」
目頭を揉み、笑みを携えながらそう言った。
年若い少女には似つかわしくない、萎びた笑顔だと思った。
申し訳ないと言う俺に対する気遣いが手に取る様に伝わってくる。
肇に何の責任も無いのに、そんな風に気を遣らせている。
俺はただもう一度だけ『すまない』と心の中で呟いた。
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