過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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104:名無しNIPPER[saga]
2015/03/27(金) 17:35:00.04 ID:5Njip8ToO

 もやもやする。

 逃げだすように部室を飛びだし、意味もなく階段を駆け降りてきた照は、昇降口で靴を変えながら歯噛みする。
 先ほど虎姫の部員共々知らされた事実。咲が臨海女子で麻雀をしているという現実。
 校門前の並木道を仏頂面で歩きながら、ゆっくりと反芻する。整理できた頃には、やはり少なからず衝撃が尾を引く。
 咲が高校でも麻雀をやっていた。東京で、照と目と鼻の先で。
 母は咲の進学先に関して何も教えてくれなかった。今問い詰めればあっさりと認めるのだろう。照は臍を噛む。
 中学で咲が麻雀を始めたときもそうだった。長野に会いにいこうとして、勇気が出ない私をみて目を細めながら、母は平然としていた。

『咲が麻雀を……なんで教えてくれなかったの!?』

『訊かれなかったから。最近、話す時間も持てていなかったしね』

『でも……』

『反対しろというならお門違い。咲は自分の意思で始めた。関与していないわ』

『……私がこうやって騒ぐから黙ってたの?』

『それは心外。でも中学の三年間だけとは言ってたから照の望み通りになるわ』

『姉妹なら、妹がやりたいというなら応援してあげなさいとは言っておくけど』

 あのときの会話が思い出される。
 今思い出しても腑に落ちないやりとり。今回もまた蚊帳の外。
 そして中学でやめるという母の言葉に反して、高校でも咲は麻雀を続けている。咲の進学先を頑なに教えない事から薄々察するべきだったのだろうが、やはりショックを受けてしまう。
 咲が東京にいる。あの咲が。
 会いにいくべきか。そして告げた方がいいのか。無理に麻雀をする必要はないのだと。
 しかしインターハイのオーダーは既に変更の期限を過ぎている。
 選出されていれば咲の出場如何が学校の進退に関わる。
 もっと早く知っていたら咲を説得する事もできた。いや、だから今まで知る機会を与えなかったのか。
 照個人としては、それで咲のためになるなら、学校の事情を放ってもいいと考えている。
 だが咲が聞き入れるとは思えない。咲にとって照など親戚のお姉さんと変わらない存在だろう。
 そんな相手に進退に関わる話をされても迷惑だ。もし照が咲の立場なら断る。
 横断歩道の赤信号に立ち止まるのを余儀なくされつつ、雑踏の中でまた意味もなく足踏みする。
 日はまだ高い。
 人込みを避け物陰へと足を向けながら図書館を目指す。
 しかしいってみれば閉館の日で、そこに意識を向ける余裕もなかった自分に地団駄を踏みたくなる。
 仕方なく図書館の前に踵を返し、書店に足を運ぶ。
 静かではないかもしれないが文字を読んで紛らわそうと考えていた。
 だがそこで、思いがけない人物と遭遇する。


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