過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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46:名無しNIPPER[saga]
2015/03/19(木) 17:50:57.33 ID:ZrCoTrCN0

智葉「監督。こんなところにいたんですか」

 幾つかの別室を渡り歩いた末に、智葉は探していた人物を発見する。

アレクサンドラ「あら。私を探してたの?」

 長テーブルの上に数枚の牌譜が広がっている。
 アレクサンドラはそれを熱心に観察していたようだ。

智葉「……昨日の留学生と宮永の牌譜ですか」

アレクサンドラ「わかる?」

 悪戯っぽい笑みを浮かべるアレクサンドラ。
 智葉は首肯した。

アレクサンドラ「さて、サトハは何のご用かしら」

智葉「インターハイの県予選、宮永を先鋒に起用してください」

 アレクサンドラの瞳が真剣味を帯びる。

アレクサンドラ「どういう心境の変化?」

智葉「試したくなった。インターハイ予選までに、あいつがどこまで力を伸ばすのか」

 智葉の言葉に、アレクサンドラは考え込む素振りをみせた。
 その瞳はテーブルに広がる牌譜に向けられている。

アレクサンドラ「私は、ネリー以外の三人に協力して宮永さんを抑え込むよう指示した」

アレクサンドラ「鼻っ柱を折っておくべきだと思ったから。でも」

智葉「失敗した。宮永は点数こそやや下回りはしたが、ほぼ互角の闘牌をしてみせた」

 「はあ」溜め込んだ疲れを吐き出す様に、アレクサンドラがため息をつく。

アレクサンドラ「いかな強豪にいたといえど、所詮中学レベルの経験しか持たないはずの子が、こうも力を発揮するなんてね」

 常識が通用しないわ、とアレクサンドラ。

智葉「魔物……か」

 智葉がふとつぶやく。

 天才なら星の数ほどいる。

 こと麻雀の分野において所謂『天才』といわれる人種は数多く存在する。

 ツモ牌が分かる力、一巡先をみる力、特定の牌を集める力。
 どれも、理屈を超えた超能力じみた力だ。
 加えて分かりやすい力を持っていなくても、明らかに常軌を逸した読みや勘で勝ちを拾う者もいる。智葉もこれに該当するだろう。

 だが、魔物はその上をいく。

アレクサンドラ「お陰で考えていた強化プランがパーよ」

智葉「でもまだ伸びる。あいつは中学レベルでしかなかった経験を、これから急ピッチで埋めていく」

アレクサンドラ「……宮永咲が臨海女子に入学した事はマスコミにもまだ知られていない」

アレクサンドラ「お金を出してる人はその話題性にも目をつけているのよ」

 そして、と言葉を継ぐ。

アレクサンドラ「中国や欧州といった麻雀先進国で活躍する打ち手と連日打っていけば」

 牌譜から外れたアレクサンドラの視線が、部屋をさ迷い、やがて智葉へと向く。

アレクサンドラ「臨海女子の先鋒として、全国で闘うに相応しい選手に化ける」

智葉「かもしれない」

アレクサンドラ「あら。どこに行くの?」

智葉「練習です。時間は幾らあっても足りない」

 踵を返し、別室を出ていく智葉。
 その横顔から覗く瞳は戦意に満ち溢れていた。


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