過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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59:名無しNIPPER[saga]
2015/03/22(日) 11:54:03.08 ID:elEO7+rFO


 心地よいまどろみが意識をやさしく包んでいた。
 そよ風が草木を撫でる音、淡い木漏れ日が射し込む。
 そして、横になった頭の裏に感じる柔らかな感触。
 薄目を開けて咲が膝枕をしているのだと気づくのに、ネリーは数秒の間を要した。

(寝ちゃってたんだ……サキが膝まくらしてくれてる)

(気持ちいいな……もうちょっとだけ)

 狸寝入りを決め込むネリーに気づく事なく、咲は文庫本を手に佇んでいた。
 心地よい時間が過ぎていく。
 やがて時間の境がなくなって、またまどろみの中に入りかけるネリー。だが、その直前に知らない声が耳朶を打った。

「あ、誰かいる」

「あれ宮永さんだ。同じクラスの子」

 闖入者の存在に咲も気づいたのだろう。わずかに膝を動かして反応を示した。

「宮永さんも部活?」

咲「うん。麻雀部だから……」

「麻雀部! うちってめちゃくちゃ強いんだよね」

「えー。すごい!」

咲「あの、ネ……この子が寝ているので、できたら静かに」

「あ、本当だ。ごめんね」

「っていうか外国人……? 制服着てないけど」

 留学生だと答える咲に闖入者たちは関心を示した。

「その子しってる。ネリーって子でしょ」

「そうなの?」

「うん。有名だから」

「有名?」

「なんかお金の話ばっかしてるって」

「日本に来たのもお金もらって麻雀するためだよね」

 「えー」と非難がましげに声をあげる闖入者たち。気分が沈む。

 ネリーはそういった認識をされる事が多かった。度を越えた吝嗇家だとか、お金に汚いという風評だ。
 お金への執着がある事は否定しないし、事実お金のために留学しているが、咲の前でそのような言われ方をするのは嫌だった。
 日本ではお金への執着を意地汚いとみられる事が多い。咲のように、親しく接してくれる日本人は稀だった。
 咲に嫌われたくない。
 何か言い返すべきかと考え始めたネリーに、しかし先んじて言い返したのは他ならぬ咲だった。

咲「お金のために麻雀して何が悪いんですか」

 咲の雰囲気が、麻雀で全力を発揮するときのそれに近くなっている。急激な変化をネリーは感じとっていた。
 別人のように冷たい態度。そしてネリーですら痺れる威圧。
 気勢を削がれたのは鋭い瞳を向けられているだろう闖入者たちだった。



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