過去ログ - 咲「誰よりも強く。それが、私が麻雀をする理由だよ」
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703: ◆JzBFpWM762[saga]
2015/10/14(水) 21:18:36.15 ID:KjbLMRVIo

ネリー「あ、そろそろだったね?」

 智葉が操作してつけたらしい。視界の端にリモコンを持った智葉が映った。

『第七十一回全国高等学校麻雀選手権、夏のインターハイBブロック二回戦、選手の入場が始まりますーー!』

 不意打ちに耳に入ってくるテレビ中継。どくんと心臓が跳ねた。

衣「……ほう。始まったか」

『まずはこの高校! 北海道より初出場の有珠山高校ーー』

 咲たちの卓はちょうど半荘が終わったところだったが、他も手を止めて画面に見入っている。一方の咲はそんな周囲を窺う余裕もなく、画面に釘づけだ。

 京都、八桝高校。北神奈川、東白楽高校。

 三校の紹介、当惑する咲の心境をよそに実況は滞りなく進み、最後の一校になってーー実況中継の向こうで、一際大きく歓声が轟いた。

『白糸台高校! インターハイ二連覇中の王者からはこの人、インターハイチャンピオン・宮永照選手ーー!』

 画面の中で呼ばれた少女が、悠然と入場していく。それは、紛うことなく姉の姿、思い出の中の面影を残す凜然とした面立ち。

 その横顔に見とれていた。入場が終わり、画面が切り替わったあとも未だ余韻に浸る。

 わずかな雑音を残し静まり返った部屋で、誰かが息を呑む音がやけに響く。

 誰かの視線を感じて、振り向く。見つめていた視線の主はネリーだった。

ネリー「……今のミヤナガテルってサキのお姉さん?」

咲「え?」

 突拍子のない、まさかされるとは思わなかった質問に目をしばたたかせる。

 知っていても遠慮するだろうという意味ではなく、知っていると思わなかった。

咲「……冗談で言ってる?」

ネリー「ううん、知ってて訊いた。お姉ちゃんだよね……まさかあっちが妹とかじゃなくて」

 おどけるネリーにも今は軽口を叩く余裕はない。

 咲たちの会話は当然同卓していた者にも、隣り合う卓のメンバーにも筒抜けだったから注目を買う。あちこちから視線が飛んでくる。

咲「知ってたんだ……」

 驚きは大きかった。また、今さらながら隠していた罪悪感が首をもたげる。

ネリー「……隠してた?」

咲「うん……」

 ごめんね、と小さく呟く。

ネリー「あの、ね……サキ」

咲「……」

ネリー「ネリーが言いたいのは怒ってるとかそういうんじゃなくて、その」

 ふらふらとネリーの視線がさ迷う。

 咲は何となくその言葉の先を予想していた。

 だが、それこそ、知っていても言わないでおいてくれると思っていた。

ネリー「二回戦のあれって……あの人が関係してる?」

 どうして。二回戦のときは訊かないでくれたのに。

 頭の中でぐるぐるとその言葉が反響していた。聞き間違い、空耳、言い間違えーーいや、認めなくてはならない。

 尋ねるネリーと交差したその瞳が風に煽られる蝋燭の火のように頼りなく揺れているのが印象的だった。

咲「ごめん……それは言えないよ」

 部屋の静寂を打ち破る中継の大音声が上がる中、はっきりと咲はその答えを口にした。



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